飯島勲内閣参与の奇妙な議論 日本の待機児童問題その2
Japan In-depth / 2016年4月18日 12時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
『週刊文春』4月7日号※に、内閣参与の飯島勲氏が「保育所問題を政争の具にするな」と題した一文を寄せている。
「飯島勲の激辛インテリジェンス」という連載で、実は私も結構好きである。長年にわたって政治の裏舞台で活躍してきた人ならではの情報が、とにかく面白い。
しかしながら、この一文はちょっといただけなかった。
前回も触れた通り、民進党は保育士の給与を月額5万円引き上げる法案を提出しているわけだが、飯島氏は、これを実行するには毎年2000億円の税負担が必要だとして、次のように論難する。
「保育所の施設をつくるのは、補正予算などの一時的な財源でも、やれるところからどんどんやればいいけど、給与アップはずっと続く話なんで、恒久財源がいるぜ」
「そんなカネが国のどこにあるって言うの?(民主党政権時代の〈子ども手当〉は)財源をどう確保するか何にも裏付けがなかったから、無残に崩壊したのを忘れたのかね」
意義あり。
まず前段について言えば、1兆円の税収減をもたらしかねない軽減税率を見直して、その分、保育士の待遇改善に回せば済む話である。
ミクロの話を少しすれば、千葉県船橋市など、保育所の建物は出来たのに保育士が確保できずに開園が延び延びになっている、という実例も報告されている。ついにはあの「ふなっしー」が、
「船橋市の保育園で働いて欲しいなっしー」
などと、求人キャンペーンを買って出たほどだ。
お分かりだろうか。保育士の待遇の悪さゆえに、必要な人材を確保できないことが、待機児童問題のネックであることは明々白々なのだ。
少子化対策のもっとも基本的な政策を論じている時に、補正予算による「箱物行政」を持ち出すなど、それこそ「梨汁」で顔を洗って考え直した方がよい、と言いたくなるレベルの暴論である。
次に後段だが、これは半分正しく、半分間違っている。「子ども手当」は言わば払いっぱなしだが、保育園を確保して、働くお母さんを増やせれば、やがては税収増にも結びついてくるのではないか。それこそ「一億総括役社会」とやらのタイギメイブンではなかったか。
しかも読み進めると、
「都内でお子さん一人を保育所に預けると、税財源が四十万円必要になってしまう。オレの個人的な意見としては、だったら国が二十万円をお母さんに直接支給して、働きに出ないで子育てに専念してもらった方が合理的じゃないかって気もしなくもないぜ」
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