オスプレイを政治利用する新聞の不見識 その3
Japan In-depth / 2016年4月29日 14時19分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
オスプレイの問題点は、低空での運動性能の低さ、武装が殆ど無いことで、またなまじ速度が早く航続距離が長いために攻撃ヘリも随伴できないので、戦場においての生存性が低いことだ。現在オスプレイに7.62ミリのガトリングガンを搭載することが可能にはなっているが、それでもヘリより対地攻撃の能力は低い。例えば米海兵隊の小型ヘリ、UH-1Yですら7.62ミリのガトリングガンを搭載し、更にロケット弾なども装備できるのだ。
現在米軍ではオスプレイにミサイルやロケット弾などを搭載する改修の研究を行っているが、これは採用されるかどうかはまだ不明だ。また採用されるにしても、依然として攻撃ヘリの随伴ができないために、より多くの火力支援型の極めて高価であるオスプレイの調達が必要となる。性能はともかく予算的に可能かどうかは甚だ疑問である。
これらを導入した場合、既存の攻撃ヘリの必要性は減じることになる。その場合攻撃ヘリを削減できのだろうか。まして自衛隊の予算ではそのような豪華な攻撃用のオスプレイの導入は不可能だろう。何しろAH-64Dですら62機導入する予定が、13機で中止されたのだ。
防衛省のオスプレイ採用ははじめに結論ありきで、まともに調達の是非を論じていないように思える。江渡防衛大臣(当時)は筆者の質問に答える形で、防衛省がオスプレイの競合機としてアグスタウェストランド社の民間用ティルトローター機であるAW606を挙げて比較検討し、オスプレイを選んだと主張することはおかしい。
両者の共通点はティルトローター機であることだけで、軽乗用車と、10トン積みダンプカーぐらいにサイズも用途も異なる機体だ、これを同じ工事用のトラックを選ぶ候補として比べているようなものだ。他国の国防省がこのような発言をすれば辞任を要求されるだろう。
(参考)オスプレイ選定の不透明、対抗馬は商用機?
防衛省は「複数候補から選んでいる」と強弁
http://toyokeizai.net/articles/-/51614
ところが、大臣が記者会見でこのような面妖な答弁をしても、それを記事にした新聞社は1社もなかった。つまり防衛記者クラブの見識や問題意識はその程度でしかない。そのような新聞社がまともにオスプレイの飛行特性を分析した上で、防衛省を批判できるはずがない。
産経新聞は政府と中谷防衛大臣を恐らく援護するつもりで、以下のような中谷大臣の記者会見の模様を紹介する記事を書いている。だがこれは全く逆効果だ。
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