三菱自「パジェロゲート事件」5つの違和感 その1
Japan In-depth / 2016年4月30日 7時0分
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
4月18日、三菱自動車は会見を開き、軽自動車4車種の燃費計測に際し、燃費が有利になるようデータをねつ造、対象台数は2013年6月から発売した625,000台と発表した。その後、不正をした車種は登録車にも波及し、200万台以上にのぼる可能性が出てきた。
極めつけは24日に行われた2度目の会見で、この不正は1991から行われていたことが判明、この会社は25年にも渡って不正に燃費データを国交省に提出、結果カタログ燃費は5-10%程度実際よりも高く算出された模様。そして2000年、2004年と大規模リコールによる経営危機を迎えたが、この不正燃費疑惑は両リコールの遥か前、1991年まで遡ることが判明、組織ぐるみの隠ぺい体質、今後ユーザーへの補償が莫大なものになるとされるなど、各メデイアから一斉攻撃、業績の大幅な悪化は避けられず、今回ばかりは企業存亡の危機として経営陣の総退陣も噂さされている。
今回の問題を検証する上で、ここでは“パジェロゲート”事件と命名したい。言うまでもなく、Watergate事件になぞらえたものだが、筆者の独断と偏見に基づくネーミングであり、この紙上のみでの使用に限定させて頂きたい。
筆者は自動車業界担当のアナリストなので、様々な前提に基づき、数値における業績への影響などを試算しなければならない。まだまだ対象台数などの前提条件が把握されておらず、大変流動的な段階であるが、推定2,000~3,000億円程度のコストが発生する可能性がある。今後の展開によっては、これを更に上回るとの試算も出来うることに留意したい。
株価は正直なもので、1年前に1,100円ほどであったものが、足元では430円ほどで、60%以上の下落、会社の価値を示す時価総額は、1年前の1兆1,400億円から足元では4,200億円ほど、実に7,200億円が吹っ飛んだ計算、それもこの下落の大半は、直近10日間での出来事である。この会社のネットキャッシュは4,300億円ほど。つまり、時価総額ほぼイコール現預金。会社が所持している現預金以外の事業・資産等には、既に価値が無いと市場は判断している。
何せ2000年、2004年と相次いでリコール問題を起こし、死亡事故が起き経営陣が逮捕され、その後経営危機に陥り、ダイムラーとの提携を通して立て直そうとしたが失敗、トラック部門(ふそう)をダイムラーに売却、三菱グループ各社から優先株を中心とした財務的援助を受け、人員整理・工場閉鎖等、数々のリストラを実施、その後アジアに経営資源を集中、EVやPHVなどの開発、SUVと軽自動車を中心とした戦略などを打ち出し、円安も手伝って2015年3月期に過去最高益を達成、財務リストラも終えた。
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