災害報道の在り方見直せ
Japan In-depth / 2016年5月2日 15時10分
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
「編集長の眼」
熊本の震災取材で、例によってマスコミの取材手法に対してバッシングが凄い。災害が起きるたびに同じ問題が起き、一向に改善されないので今一度考えたい。
さて、被災地にマスコミが大挙して被災地に取材に訪れることによる問題は、主に以下の2点であろう。
①救助活動への影響
②避難している住民への影響
では、どのような悪影響が考えられるか。
まず、①であるが、災害発生直後の報道ヘリの問題だ。各社が一斉にヘリコプターを飛ばすと、大変な騒音となり、地上の救助活動の妨げになるとかねてより批判されている。また、中継車やマスコミの人間を乗せた車が一斉に被災地に向かえば、交通渋滞を引き起こし、救助の為に向かっている警察・消防・自衛隊の車の到着が遅れる可能性もある。
次に②だが、今回関西テレビの中継車がガソリンスタンドで給油の列に割り込んだことが大問題となった。取材を最優先し、地元の車両や救助の車両を差し置いて、給油を待つ車の列に割り込むことなど許されることではない。また、地元コンビニやスーパーでの買い占めも過去何度となく指摘されており、大量に押し寄せたマスコミによるこうした行為は地元住民にとっては大迷惑だ。家を失い、着の身着のままで避難生活している方々が最優先されるべきである。
又、TBSが夕方のニュースで、避難所前で中継している最中、地元の人に車(中継車?)が邪魔だからどかせ、と現場で怒鳴られているシーンが生で流れた、ということもあった。いずれにしても、避難している現地の人たちの神経を逆なでする行為は厳に戒めなければならない。
こうしたマスコミの行為は今のネット社会ではすぐに拡散され、“独善的”だと非難される。そうしたネガティブな言説は、マスコミが考えている以上に深刻な影響を及ぼしていると思う。問題は、マスコミ自身がそれを全く感じていないかのように見えることだ。何故なら、何ら改善の姿勢が見られないからだ。
社会の犯罪や不祥事を叩くくせに、自分たちの行いは正さないのか、というわけだ。災害報道は必要だし、無くなっていいわけはない。ただ本当にその情報は必要なのか、という見地から報道の在り方を一から見直す時期に来ていることは間違いないだろう。
まず、報道ヘリだが、NHKと民放で協議し、いつどの時間帯にどの社が飛ばすか調整し、飛ぶヘリの数を極力減らすことだ。その上で映像を共同使用すればよい。騒音をかなり減らせるはずだ。
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