韓国、加湿器殺菌剤事件の今 100人超死亡
Japan In-depth / 2016年5月4日 11時0分
李受玟(イ・スミン/韓国大手経済誌記者)
桜が咲き乱れていた2006年の春。ソウルの有名な総合病院の一つであるソウルアサン病院で勤務していた洪(ホン)・スジョン教授(小児青少年呼吸器アレルギー科)は妙な旣視感を経験した。毎年、冬から春に移る時期に理由の不明な奇病性肺疾患の患者たちが相次いで病院に運ばれてきた。肺繊維化(肺が硬くなって呼吸ができない状況)が深刻に進行されて顔が真っ青になった赤ん坊たちは、抗生剤を使った治療も甲斐なくこの世を去り、親と医師団は無力感にさいなまれた。
「なぜ同じ時期に原因不明の疾病が広がるのか?」この疑問に対する答えを探すため、洪教授は同僚の医師らと自分が担当した15人の乳幼児患者の事例を集めて論文を書いた。しかし、学界は「原因不明」とみなした。しかし翌年にも患者の名前が変わっただけで、同じことが再び繰り返された。彼が二番目の論文を書いて伝染病などの予防責務を負った国家機関である疾病管理本部(ジルボン)にこのような状況を報告して全国的なモニタリングを要請したが、「特定のウイルスではなさそうだ」との安易な答えが返ってきたのみだった。
それから4年が過ぎた。今回は免疫力が低い乳幼児患者ではなかった。 今回は妊婦達だった。重患者室に入院して人工呼吸器に頼っていた患者らはお腹の子供たちとともに死亡した。2011年4月、ソウアサン病院は、正式にジルボンに調査を要請した。ジルボンと保健福祉部はやっと問題の深刻さに気づき、大々的な調査を行ったが、胎児を含む少なくとも142人がすでに病名さえわからないままこの世を去った後だった。
『空気中に漂う「何か」が気管支に入り炎症を誘発し、気管支が閉塞して呼吸困難の症状に陥る。(その結果)呼気が体外に排出されず、肺の圧力が高まって肺に深刻な損傷が生じ、患者は死亡する。』洪教授の仮説は数回の実験や疫学調査を通じて立証された。
その何かとは「加湿器殺菌剤」であることが明らかになった。正確には殺菌剤に入った有毒物質である「PHMG(ポリヘキサメチレングアニジン)」が呼吸器を壊したと報告された。同年8月、ジルボンは「加湿器に入れた殺菌剤が肺の組織に傷を負わせた要因と推定される」と発表し、大型スーパーなどでの加湿器殺菌剤の販売を禁止した。
その時から再び5年が経った2016年の春。昨年10月から同事件を捜査し始めたソウル中央地方検察庁は先週から加湿器殺菌剤を製造·販売したオキシー・レキット・ベンキーザー(以下、オキシ― Oxy Reckitt Benckiser : 現RBコリア)ら会社関係者らを呼んで、業務上過失致死容疑について調査している。
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