三菱自「パジェロゲート事件」5つの違和感 その7
Japan In-depth / 2016年5月6日 7時0分
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパンマネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
【違和感⑤ 三菱自の今後】
さて三菱自動車の今後である。メデイアの大半の論調は、“出直し”ではなく、“撤退”である。それも、客観的にその背景や経済合理性からの論点ではなく、ただ情緒的に、“懲りない奴らだから”、というものである。筆者がこれに組しないことは前述したが、一寸先は闇である。
国内販売は今後どの程度の期間に渡って実質的な業務停止が続くのか、国内操業はどの程度止まるのか、顧客等への補償がどこまで膨らむのか、訴訟リスクはないのか、そしてこの問題を考えるとき、ほぼ全員の行きつく先は、“今回も三菱グループは自動車を救済するのか”、という1点である。
前2回のリコール騒ぎ、それに続く経営危機、この際はグループ揃っての救済、特に銀行・商事・重工の3中枢による救済により、10数年の時間を費やしながらも、蘇った三菱自動車。ただ今回は様相がやや異なる。三菱各社も、会社を取り巻く環境も。
三菱重工業は三菱自動車に約20%を出資する筆頭株主。元々は重工の自動車部門が独立して三菱自動車が誕生。相川社長の実父が重工の相川元社長・会長であることはよく知られた話。今回も実父は自動車の救済に積極的と見られる(週刊新潮5月12月号)。
一方で、重工の業績がさえないこともまた事実。大型客船でミソをつけ、MRJが延期を重ね、米国では原発で多額の訴訟、業績の下方修正を繰り返し、2017年3月期の純利益は640億円。何と、三菱自動車の純利益890億円を下回る!
株価も397円(4月28日終値)と1年前から半減以下、株価は絶対値での横並び比較は出来ないものの、現実問題として、三菱自動車の449円(同上)よりも下なのである。
三菱商事も大変厳しい。2016年3月期業績を大幅に下方修正したばかり、純利益で従来予想の3,000億円から1,500億円の赤字へ、何と4,500億円の下方修正、大半はチリの銅事業に伴う減損処理なので、Cash outではないにしろ、資源価格の暴落によって業績は厳しい。大変興味深いことに、2016年3月期の決算、純利益で言えば、三菱自動車のそれは、三菱重工や三菱商事の水準を上回っているのである。
コーポレートガバナンスの厳格化も違う点か。前述した通り、10日間で株価は60%以上下落した。その要因の一つがコンプライアンスで、法令を無視するような企業への投資は禁止する、という内規を定めた機関投資家が多いのである。法令違反というだけで、すぐに株式売却の対象になる。
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