福島で被ばく検査を続ける意味
Japan In-depth / 2016年5月7日 12時0分
差別は、そんなに簡単になくならない。被曝が差別を生むのは、我が国だけの問題ではない。原発事故から30年以上が経過したベラルーシでは、いまだに「放射線汚染地域出身者とか結婚させたくない」と言う人がいる。
この問題を研究している相馬中央病院の森田知宏医師は「穢れ思想に通じる部分がある」と指摘する。
前出の森田医師の文章の中で、福島市内で除染活動に従事する曹洞宗常円寺住職の阿部光裕氏は「穢れ思想は、平穏な日常を送りたいと思う人が、非日常を忌み嫌うという中から生まれてきた」と述べている。多くの国民にとって、福島は非日常であり、出来れば関わり合いたくない。
福島の子どもたちも、このことをひしひしと感じている。2013年に相馬市が中学生1,012人を対象としたアンケートでは、約4割が「結婚の際、不利益な扱いと受ける」と回答した。
どうすればいいのだろう。森田医師は、「この問題の構造は、被差別部落問題やハンセン病差別問題と似ており、解決するためには医療界・教育・宗教・メディアが連携する必要がある」と言う。私も全く同感だ。
この中で、私たちが出来ることは、粛々と被曝検査を続けることだ。放射性ヨウ素による甲状腺癌を除けば、不妊や癌などの問題を起こすのは主として放射性セシウムだ。現在の検査体制を維持すれば、放射性セシウムによる被曝量は正確に評価できる。
幸い、相馬市や南相馬市は学校健診の中に内部被曝検査を盛り込み、問題がないことを確認している。そして、学校健診に組み込まれているため、いまだに内部被曝検査の受診率は9割を超える。このことは後々効いてくる。なぜなら、成長した子ども達が、流産やがんを経験しても「被曝が原因でない」と明言できるからだ。現在、我が国では二人に一人は癌になり、20代で10%、30代で25%程度の女性が流産する。
ベラルーシで30年以上差別が続いていることを考慮すれば、福島出身者が将来、癌になったり、流産した場合に、配偶者やその家族が「福島で被曝したせいだ」と考えても不思議はない。「なぜ、避難しなかったのか」と批判される人も出るだろう。
その際、内部被曝していないという自分自身の検査結果を提示することは、何にも増して説得力がある。福島で育った子どもを言われなき差別から守る一助になるはずだ。
以上は、東日本大震災以降、私どもの研究室が地元の自治体や医療機関をお手伝いしてきた活動の一部だ。地道に続けていきたい。
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