仏全土混乱、労働法改悪反対デモで
Japan In-depth / 2016年5月17日 23時0分
Ulala(ライター・ブロガー)
「フランス Ulala の視点」
フランスではこの2か月、全国で大規模デモが頻繁に行われている。フランス政府が企業の雇用促進と競争力向上の目的で労働法の改正を目指しており、それに対する反対デモだ。
現在のフランスの労働法は労働者を手厚く守るものだ。しかしその結果企業側は労働コストが重くのしかかり、国際競争でも苦戦を強いられている。そこで、政府として規制を緩和することにより企業の運営を活性化し、雇用促進を後押しする方針なのだ。
しかし、労働者側からしてみればまったく納得がいかない。政府の言う通りの改正がなされれば、働く時間が延ばされた上、残業代が減らされ、解雇されやすくなるのだ。当然のように大多数の労働者から大反対が起こり、2010年の年金システム改正反対のデモ以来の大規模なものに展開している。
フランスの労働事情は日本とは全く違う。まず日本では新卒採用が積極的に行われているため若者も職につきやすい。またパートやアルバイトなど非正規というシステムがある 。非正規は社会的保護も弱く、賃金が安いなど、現在日本では大きな問題になってはいるとは言え、企業にとっては雇用調整が手軽と言う側面があり、求人自体多い。そのため労働者側も選ばなければ何かしらの仕事を見つけることができる、失業率も低くなるのだ。労働力調査(注1)によると日本の失業率は3.2%である。また再就職先を見つける期間も平均は3か月~6か月程度だと言われている。
しかし、フランスでは仕事をみつけるのはとても大変だ。全労働者が手厚く保護されており、例え経営状態が悪化したとしても容易に解雇はできない。解雇できるまでにとても時間がかかり、ヘタすれば収益がないのにもかかわらず給料を払い続けなければいけないという窮地に立たされることになる。そのため最低限の雇用のみがなされる結果となる。
INSEE(注2)によるとフランスの失業率は10.1%、中でも若年層の失業率は24.3%とかなり高い。すでに経験が有る者が優先されるため、経験値がない若者が仕事を見つけるのが難しく、一番影響を受ける。また、失業者が仕事を見つけるまでの期間は、Pôle emploi(注3)によると平均は13か月半であり、失業すれば、長い期間職を探し続けることを強いられることになるのだ。
そこで労働者としては一度見つけた職には、なんとしても居続けることが重要、と言う意識が強くなり、長年に渡って戦い続けた。そして戦いの結果勝ち取ってきた複数の権利の集大成が現在の労働法とも言える。そんな労働法を、政府はいとも簡単に変えようとよしているからこそ、労働法を守るべく全国あちこちで大規模なデモが発生しているのだ。
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