オバマ広島訪問 被爆者や家族、遺族の声
Japan In-depth / 2016年5月26日 18時0分
去年、被爆から70年の節目の年にニューヨークで開かれたNPT・核拡散防止条約再検討会議も、核軍縮の停滞を感じさせるものだった。アメリカは、今後の核軍縮の取り組みを示す最終文書に盛り込まれた中東の非核化を巡る内容に反対し、会議は「決裂」という最悪の結果に終わった。5年に一度開かれるNPT再検討会議が最終文書の採択に失敗したのは、2005年以来のことだった。
プラハ演説の中で、オバマ大統領は確かに「アメリカは核兵器のない世界の平和と安全を追求する。」と述べた。しかし「この目標は直ちに達成される訳ではない。私の生きているうちは無理であろう。」と続けている。
そして日本政府も核の問題に関しては、国際的に非常に複雑な立場だ。
オバマ大統領の広島訪問について、安倍総理は「日本は唯一の戦争被爆国として核兵器の廃絶を一貫して訴えてきました。」と発言していたが、本当にそう言い切れるか。
去年、国連総会で核軍縮に関する作業部会の設置が、国連加盟国のおよそ3分の2にあたる138か国の賛成で決まったが、アメリカの「核の傘」の下にいる日本は、採決を棄権した。核兵器の法的禁止を目指す動きがあることから、アメリカなどが反対したことに配慮した判断だ。
更に同じく去年の8月6日の広島の平和記念式典での安倍総理の挨拶も物議を醸した。1994年以降、式典に列席してきた歴代の総理が必ず触れてきた「非核三原則の堅持」という文言を盛り込まず、被爆者らから批判の声が上がった。
「今回の訪問を、すべての犠牲者を日米で共に追悼する機会としたいと思う。」
オバマ大統領とともに広島を訪れる安倍総理はこう述べた。
アメリカの大統領の訪問を日本政府としてどう捉え、今後、核を巡る問題においてどのような立場で行動していくのか、国際社会で「唯一の被爆国」と言うなら何をすべきなのか、今回の訪問は日本にとってもそれらを再考する重要な機会だ。
オバマ大統領の広島訪問の日が近づくにつれ、被爆者や家族、遺族らからは様々な反応が聞かれる。
被爆者である母親、叔父、叔母の遺影を持って当日広島入りしようと決めた奈良県の男性もいる。東京の男性も、原爆で父親を亡くした広島の母親に、今回初めてじっくり核についてどう思うのか、アメリカに対してどんな感情を持っているのかを聞いたという。原爆投下は、確かに71年も前の出来事だ。しかし、原爆に関わりを持つ広島、長崎の人々にとっては、まだ「過去」や「歴史」と簡単に割り切ることは難しい。肉親を無残に失った悲しみ、放射線障害という未知なる病との闘い、被爆者に向けられた壮絶な差別、どれもまだ終わった問題ではない。
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