HPVワクチン副反応の診断基準は単なる仮説
Japan In-depth / 2016年6月4日 18時0分
池田氏の言動には大きな矛盾があります。氏は因果関係を不明としつつも、プレゼンテーションスライド中にて“Probable HPV vaccine related”(HPVワクチンと関連することがかなり確実)との記載をしています。
さらに、「この年代の女子における起立性低血圧(OH)は珍しい病態ではないが、なぜHPVワクチン関連と診断できるのか?」と質問したところ、池田氏は「OHと複合性局所疼痛症候群が合併するのは極めて希であるからだ。」と返答しました。
診断基準であるからには、ワクチン接種群と非接種群とで、症状の出現率に差がなければなりません。そして、一つの症状だけでは診断の正確性が低いため、複数の項目の有無を評価することで、診断基準の感度と特異度を極力高めるのが通常です。しかし、池田氏の返答からは、そのような統計学的吟味の有無についてのデータ紹介、言及は全くありませんでした。
他院で心因性と診断されたが、症状がHPVワクチンによるものと強く疑って受診している場合があるそうです。確認のため質問したところ、「ほかの医師が診察の上、症状とワクチンの関連はないことを詳細に説明されたが、保護者がHPVワクチンとの因果関係を強く信じており、当院を受診するケースが複数あった。」との返答でした。
患者および保護者の強い思い込みは、往々にして正しい診断、治療から本人達を遠ざけることになり、有害です。このことは池田氏も理解しているはずです。症状が生じた原因の一つとして、HPVワクチンを候補に挙げるのは構いませんが、ワクチンが原因だとの思い込みを強化するような池田氏の言動には疑問を抱かざるを得ません。
問題点2:不確実な診断の割に毒性の高い治療
氏は治療としてステロイド大量投与や、免疫グロブリン大量注射などの治療を行ったと発表しています。ステロイドパルス療法は、自己免疫疾患で用いられる毒性の高い治療法で、益>害を確信した場合に実施すべきで、氏はどのようなケースに治療を行ったのか詳細なデータを公表する義務があります。
ステロイドパルス療法は高血圧、糖尿病、ステロイド精神病、満月様顔貌、筋力低下など様々な副反応を起こします。免疫グロブリン大量注射は高額ですし、通常は一時的な効果しか得られず根本治療とはなりません。慢性炎症性脱髄性根神経炎や特発性血小板減少性紫斑病などの自己免疫疾患に対して用いられます。血液製剤ですから、現在では極めて安全性が高まっているものの、感染症のリスクはゼロではありません。
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