フロリダ同性愛バー襲撃テロ 国内分裂の矛盾突くIS
Japan In-depth / 2016年6月13日 9時14分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
米フロリダ州オーランド市の人気ゲイバー「パルス」で、過激派組織「イスラム国」(IS)の思想に影響を受けたニューヨーク州生まれのアフガニスタン系米国人オマル・マティーン容疑者(享年29)が12日早朝、合法的に入手したAR-15ライフルや銃で同性愛客を標的にした攻撃を行い、50名が死亡・53名が負傷した(日本時間13日6時現在)事件は、米史上最大・最悪の銃撃事件となり、米政府はイスラム過激派のヘイトクライム(憎悪犯罪)テロ攻撃と認定した。
米欧の軍事的攻撃により本拠地のイラクとシリアで弱体化したISに忠誠を誓うマティーン容疑者の行動は、米国内で高まるイスラムへの憎悪感情や銃規制を決められない米国政治の無能ぶりを巧妙に突き、米国が自国の矛盾や問題を解決できないことを浮き彫りにした。テロ直後の現在の米国は表面上「反テロ」で団結しているが、いずれ世論が割れ、米社会がさらに分裂して弱体化し、ISや他のイスラム過激派を利するだろう。
このテロは、米大統領選で「反イスラム」的姿勢をとり、銃規制に反対する共和党のドナルド・トランプ候補(69)と、「寛容社会」の言説を用い、銃規制を訴える民主党のヒラリー・クリントン候補(68)が本選で一騎打ちとなるタイミングで引き起こされたため、本選では銃規制や同性愛者政策や対イスラム政策が争点になり、国論分裂を深めよう。
バラク・オバマ大統領は、過激派の意図を敏感に感じ取り、記者会見で「米国人として結束して立ち向かわなければならない」と訴えた。だがすでに、分裂の兆候は表れている。
保守派とリベラル派はテロ非難で一致しているが、多くの保守派論客は今回の事件が「イスラム過激派によるテロ」である側面を強調し、マティーン容疑者の動機の一部が同性愛者嫌悪であることに触れない。同容疑者は以前、同性愛者の多いマイアミ市で二人の男性がキスをしているのを目撃して憤り、父親にその感情をぶちまけていた。
共和党のダン・パトリック・テキサス州副知事(66)は、「人は種を蒔けば、その刈り取りもする」という新約聖書の句を引用したツイートを行い、テロの犠牲になった同性愛者は、天罰を受けたと示唆した。また、同党のトランプ候補は、「オバマ大統領は、やっと『イスラム過激派』という言葉を口にするだろうか。イスラム過激派を名指ししないなら、恥じて辞めるべきだ」とツイートしている。トランプ支持者のイスラム憎悪は増幅される。
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