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残留支持する米国の本音と建て前(上)英国はEUから離脱するか その2

Japan In-depth / 2016年6月13日 21時31分

残留支持する米国の本音と建て前(上)英国はEUから離脱するか その2

林信吾(作家・ジャーナリスト)

「林信吾の西方見聞録」

旧知の英国人ジャーナリストに、こんな質問をしたことがある。「一般的な英国人は、USAとヨーロッパの国々とでは、どちらにより親しみを感じているのだろう?」即答だった。「残念ながらUSAでしょうね」

 残念ながら、という表現はなかなか含蓄があって、彼も私も、EUが「国境なき国家連合」から「ヨーロッパ合衆国」への道を歩んでいること、とりわけ、ナポレオンもヒトラーもなし得なかったヨーロッパ統合を、一発の銃声も響かせることなく実現せんとしていることには、高い評価を与えている。

 しかしながら、一般的な英国人はそうではない。理由の第一は、同じ英語国民だという点であろう。アメリカ英語を毛嫌いする人も決して少なくないのだが、それでもフランス語やイタリア語に比べれば、会話がちゃんと通じる分、親しみを感じて当然ではある。それ以上に、生活文化の様々な点で、英国とヨーロッパ大陸諸国は大きく異なる。

 たとえば自動車の運転だが、英国は日本と同様、左側通行の右ハンドルなので、我々にとっては慣れる必要がない分、すぐ車に乗る生活ができる。しかし、このことは「日本と同じように運転できる」ことを必ずしも意味しない。

 ロンドンで働いていた頃、同じ職場の日本人女性に、急用で一度帰宅したいから車を貸して欲しい、と頼まれたことがある。その日の夜、車と彼女は戻ってきたのだが、「久しぶりに運転したせいかしら。50キロしか出してないのに、すっごい怖かった」と言うではないか。顔から血の気が引いたのを、今も覚えている。

 私が当時乗っていたのはドイツ車だったが、英国で売られているモデルは、メーターが全てマイル表示なのだ。夕暮れ時のロンドンの住宅街を、時速50マイル(80キロ)でぶっ飛ばして行っただと?

 そんな話、EUの問題とどう関係があるのか、と言われるかもしれないが、実は大ありなのだ。ヨーロッパ統合がこのまま進展すれば、英国人は左ハンドルの車に乗り、メートル法の生活を強いられるのではないか。そういった危機感を、現実に抱いているのである。

 飲食物の容量も、EUではメートル法で表記することと決められているが、この結果、たとえば英国のビール会社は、パブなどで売るためのパイント単位(1パイントはおよそ568ミリリットル)と、ヨーロッパ大陸諸国への輸出向けのリッター単位と、2種類の容器を準備しなければならない。

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