EU離脱問題 英国の二面性とは
Japan In-depth / 2016年6月22日 2時47分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年6月20-26日)」
今週の焦点は、やはりBrexit(英国のEU離脱)の是非に関するイギリス国民投票の行方だろう。改めて英国には二面性があることが分かった。あの冷静沈着で理性的な英国紳士と、破壊的な暴動が珍しくないあの英国サッカーファン。一体どちらがUnited Kingdomなのか。恐らく答えは「両方とも英国的」ということだろう。
理性で考えればEU離脱はあまりにリスクが大きい。離脱派は口を開けば、EUは加盟国の主権を制限する非民主的組織だ、不法移民を入れて公共サービスを劣化させるな、EU分担金は高過ぎる、貿易ルールは不公平、規制は不必要、官僚組織は非効率と主張する。要するに英国は欧州の言う通りにはならないという感情論だ。
これに対し、残留派は正論で反論する。国際組織である以上、EUに一定の制約があるのは当然、EU加盟維持はそうした短所を超える利益がある、残留すれば英国経済は繁栄を続け、英国の国際的影響力は続き、安全保障は確保され、雇用と対英投資は増えるので、英企業のリスクは減るという。理性では十分理解可能なのだが・・・。
それでも、人口6500万もいる自由民主主義国家で、有権者の過半数に理性的な判断をしてもらうことが如何に難しいことか。特に、貧富の差が拡大し、社会的不公平が顕在化する中で、負け組が夢を持たなくなった社会で、人々に冷静な判断を求めることは容易ではない。これは英国だけの問題ではなくなりつつある。
〇欧州・ロシア
イギリスが国民投票を行う23日にフランスでは最近の労働法改正に反対するデモが計画されているという。24日にはベルギーの労組もゼネストを計画しているそうだ。一体欧州は如何なる方向に進む(または退く)のだろうか。英国民の決断は、如何なるものであれ、欧州大陸にも波及するだろう。
〇東アジア・大洋州
中国の習近平国家主席が18-22日にセルビア、ポーランドを訪問した後、23-24日にウズベキスタンで開かれる上海協力機構首脳会議に出席する。この首脳会議は中露の主導権争いが見物なのだが、ここで「一帯一路」が如何に語られるかに興味がある。露の対中央アジア影響力は強く、中国の思う通りにはならないと思うのだが。
もう一つ中国関連で興味深いのは、25-26日にAIIBが最初の年次総会を開き、投資案件を発表するというニュースだ。最初とはいえ、いやむしろ、最初が肝心だからこそ、どの程度の規模の優良案件がいくつあるかが気になるところだ。
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