離脱派「迷走」英政界、混乱に拍車
Japan In-depth / 2016年7月5日 11時47分
岡部伸(産経新聞ロンドン支局長)
「岡部伸(のぶる)の地球読解」
欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国で、離脱キャンペーンの「顔」だったジョンソン前ロンドン市長が与党保守党の党首選に締め切り直前で突然、不出馬を表明した背景に盟友として共に離脱運動を主導して来たゴーブ司法相の「裏切り」があったとの見方が有力だ。
また移民制限を主張して離脱運動を盛り上げた英独立党のファラージ党首は、党首を辞任すると表明した。離脱決定後の国の舵取り役がいつまでも決まらず、国民投票で歴史的な勝利後、EU離脱に対する不安と期待で世論が二分するなか、離脱派の「迷走」は、英政界の混乱に一層拍車をかけそうだ。
◇ボリス以外なら誰でも
「政治的クーデターが起きた」(BBC放送)。党首選に出ないと明言していたゴーブ氏の立候補と、ジョンソン氏の出馬断念は英政界ではこう指摘される。英メディアによると、国民投票の運動で、離脱派を勝利に導いた立役者であるゴーブ氏とジョンソン氏は蜜月だった。
ところが勝利後、関係に亀裂が生じた。冗談を連発する飾らない言動で国民的人気を集めるジョンソン氏だが、EUが離脱を阻もうとするのは、「欧州制覇を試みたヒトラーと同じだ」などの問題発言が多く、首相としての資質を疑問視する声が噴出。党内を2分する分断を招いた張本人として、ジョンソン氏の名前をなぞり、「ABB(Anyone But Boris、ボリス以外なら誰でも)」との言葉が飛び交うほど残留派を中心に保守党内でジョンソン氏への反発が広がった。
党首選の選挙運動責任者を任命されたゴーブ氏には、ジョンソン氏に主要議員がなびかず、支持者集めが難航し、ジョンソン氏が残留派の保守党議員50人の集会に出席できなかったことから、「ジョンソン氏では党首選で勝てないと徐々に分かった」という。
またジョンソン氏が27日付デイリー・テレグラフ紙経への寄稿で、公約だった「移民制限」を撤回する内容で指導者としての資質を懸念する声が保守党内に高まったという。ジョンソン氏の友人はこの寄稿は「ゴーブ氏が校正した」と証言する。また党首選運動の混乱も運動を率いたゴーブ氏が原因と主張する。ハッキリしているのは離脱が決定したものの離脱派には、EU離脱に向けての確固たるビジョンに欠けていたことだ。
◇ゴーブ氏妻のメール
追い打ちをかけたのが29日夜、流れた1通の電子メールだった。書いたのはゴーブ氏の妻でデイリー・メール紙のコラムニスト、サラ・バイン氏で、「議員はボリスを支援する保証がなく、(メディア王)マードックも嫌っている」と首相としてジョンソン氏の性格を疑問視する内容だった。
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