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ソウル女性刺殺事件とミソジニー論争

Japan In-depth / 2016年7月7日 10時59分

 ツイッターやフェイスブックなどSNSでは、市民たちが書いた追慕のポストイットを記録したり、性差別とセクハラを受けた経験を打ち明けたアカウントなどが新しく作られ、一般の市民には馴染みのない単語だった『女嫌い』を公論の場に引き出した。(注)

 それに反発し、「女嫌い」について議論する社会の雰囲気を嫌う動きも起きた。事件の捜査を受け持っている警察もその例の一つであった。事件を担当した瑞草(ソチョ)警察署は「この事件は精神病を患っている金の殺人行為で、女性をターゲットにして殺した」と発表した。有名なプロファイラーとして知名度が高いピョ・チャンウォン議員(ダブルオ民主党、元警察大教授)も警察の立場を支持しており、「被疑者の精神疾患の経歴などから、女嫌い殺人だと断定し難い」と話した。

 追悼の現場には「女嫌い殺人じゃない」と主張する男性たちが直接出てデモをしたりした。彼らは被害意識がある女性らが事件を過度に拡大して多くの男性を殺人者に追い込んでいると言った。この主張に対して女性らは、不特定多数のうち殺人者を特定することができない以上、全ての男性を警戒するしかないという論理で対立した。

 政治圏でも「女嫌い」かどうかをめぐって熾烈な攻防が繰り広げられた。少数政党である労働党はこの事件を女嫌いの犯罪の事例だと規定し、「犯行場所を選択し、女性が入るのを1時間以上待った。女性に無視されて犯行を犯したという説明は、単なる通り魔殺人ではないということを証明している」と論評した。

 一方、与党のセヌリ党は女嫌い殺人には同意せず、事件が発生した共用トイレの安全問題を取り上げ、再発防止のための関連法を改正して規制していくという党方針を決めた。第1野党のダブルオ民主党は、前述したピョ議員や2012年の大統領選候補だった文在寅(ムン・ジェイン)議員を中心に追悼の念を発表するなどの個別的な行動だけで、女嫌いから始まった事件だとは言わなかった。

 マスコミも、社ごとに立場が違った。保守系は通り魔殺人に舵を取り、進歩的な性向のマスコミでは女嫌いに焦点を合わせた。共用トイレに力を入れた会社は「空間の分離が行われるなら、むなしく殺害される女性が出ることはない」と強調したが、女性に被害妄想を持った人が犯した女嫌い殺人だと見ている会社は「空間分離の代わりに、韓国社会の男性中心主義を打破しなければならない」と声を高めた。

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