日本から米軍が引き揚げる日
Japan In-depth / 2016年7月15日 8時51分
東西冷戦中の1980年代、日米貿易摩擦が激しい時期、米側で日本の防衛面での態度を「ただ乗り」とする批判は一貫して存在した。91年1月の第一次湾岸戦争ではアメリカ主導の約30カ国が多国籍軍を組織してクウェートからイラク軍を撃退した。だが日本はなんの防衛行動もとれず、資金だけを供して「小切手外交」の汚名を受けた。
1997年8月にはアメリカ最大手の外交研究機関「外交問題評議会」が日米同盟には「危険な崩壊要因」がひそむとして、日本側の集団的自衛権禁止を指摘し、その解禁により、「同盟をより対等で正常な方向へ」と促す勧告を発表した。日本は有事になんの軍事行動もとれないという批判だった。
2001年1月に登場したブッシュ政権も日米同盟の強化には「双務性が必要」(ハワード・ベーカー駐日大使)だと強調した。日本の憲法に由来する集団的自衛権の行使禁止は同盟をあまりに片務的かつ不公正にするというのだ。
2001年9月のアメリカ中枢への同時テロでは北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国やオーストラリアが集団防衛権を宣言し、国際テロ組織との戦いで対米共同行動をとった。だが日本はここでも集団自衛に背を向け、国際テロとの闘争にも協力しないと非難された。
2006年10月、ワシントンの主要研究機関「AEI」が北朝鮮のミサイルに対する日米同盟の機能は日本の集団的自衛権の禁止により大きく妨げられているとする報告書を発表した。
要するにトランプ氏が述べた「アメリカは日本を守るが、日本はアメリカを守らない」と総括する日米同盟不公正論はすでに底流として存在してきたのだ。
日本の集団的自衛権は昨年9月の平和安保法制法の公布によりその行使が一部、容認された。だがまだまだ普通の国家並みの行使は認められていないのだ。
第3は日米同盟の縮小あるいは弱体化である。アメリカ側の事情だけで在日米軍が減り、日本への防衛誓約が弱くなる傾向だといえる。
オバマ政権は財政赤字への対処として2011年8月に予算管理法を成立させ、赤字が一定以上に増せば、まず国防費をその後10年間に最大7500億ドル削減するという方針を打ち出した。米軍部隊も大幅に縮小する方針だ。在日米軍を支える基盤がまず小さくなっているのだ。
そのうえにアメリカ政府は在日米軍の再編について2006年に日本側と合意した「ロードマップ」で沖縄駐在海兵隊の9000人を日本国外に移転させることなどを決めた。縮小への動きである。
この記事に関連するニュース
-
「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 8時20分
-
トランプ氏が痛烈批判 バイデン氏の「弱腰」外交に根強い懸念 中朝露などの増長招いた
産経ニュース / 2024年7月14日 12時0分
-
[社説]自衛隊発足70年 際限なき拡大に危機感
沖縄タイムス+プラス / 2024年7月2日 4時0分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その5(最終回)日本との同盟を超重視
Japan In-depth / 2024年6月28日 19時0分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その1 新文書が示す国際安全保障策
Japan In-depth / 2024年6月25日 23時0分
ランキング
-
1バイデン大統領、米大統領選からの撤退を表明 代わりの候補としてハリス副大統領を指名
日テレNEWS NNN / 2024年7月22日 3時30分
-
2党内からの「撤退圧力」強まるバイデン氏、進退の判断にはジル夫人らの意向が影響か
読売新聞 / 2024年7月21日 9時45分
-
3《トランプ前大統領銃撃事件で使用》「全米で広く出回る」AR-15ライフル、日本の暴力団が「使わない」理由
NEWSポストセブン / 2024年7月21日 16時15分
-
4大統領警護隊、警備強化を拒否 トランプ氏側が複数回要請
共同通信 / 2024年7月22日 0時36分
-
5「トランプ氏なら終戦可能」 ジョンソン元英首相が寄稿
共同通信 / 2024年7月21日 22時45分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)