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日本から米軍が引き揚げる日

Japan In-depth / 2016年7月15日 8時51分

さらにオバマ政権は有事の日本防衛の責務を確実に果たすことにも疑いを感じさせる。尖閣諸島の防衛でも「尖閣は日米安保条約の適用対象になる」とは述べるが、決して「尖閣は有事には米軍が守る」とは言明しない。なにしろエジプト、イスラエル、サウジアラビアなど年来の同盟や緊密なきずなを保ってきた諸国の政権に冷たくし、不信を高めた軌跡があるのだ。アメリカ自身の利害からの同盟縮小ということだろう。

以上、眺めてくると、トランプ氏の日米同盟についての発言もこれら3種類の流れを混合させていることがわかる。当初の印象とは異なり、短絡でも無知でもない発言だといえよう。

さて日本はどう対応すべきなのか。この問題の複雑さはいまの日米同盟が表面的にはきわめて堅固にみえる点にもある。オバマ、安倍両政権下での日米安保協力は中国や北朝鮮の脅威の増大もあって緊密となっている。

しかしアメリカ側には年来、対日同盟に対して本質的あるいは構造的とも呼べる不満が潜在するのである。その不満がトランプ政権下で現実の政策となることも可能だといえる。

そうした不透明な展望に対して日本はやはり独自の防衛努力の強化しか選択の道はないだろう。自国は自国で防衛するという普遍の哲理の実践とでもいえようか。トランプ氏は期せずして日本にそんな原点への思考の機会を与えたようである。

(この記事は月刊「SAPIO」2016年8月号からの転載です。)

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