メイ新首相のお手並み拝見 EU離脱・英国の未来像 その4
Japan In-depth / 2016年7月15日 12時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
英国の新首相が決まった。
直前まで、テリーザ・メイ内相と「女性対決」を演じていたレッドサムエネルギー副大臣が撤退し、無投票で保守党党首選を制したもので、マーガレット・サッチャー以来、26年ぶりに女性の首相が誕生することとなる。
英国では、今も立憲君主制が守られているため、エリザベス2世女王による指名による就任となるわけだが、現地時間の13日に、その手続きも終えた。
就任演説では、EUからの離脱問題よりも「社会的弱者に手を差し伸べる」といった所信表明に力が入れられたが、一方では、前回紹介したボリス・ジョンソン元ロンドン市長を外相に起用する人事を発表し、離脱に向けての決意を内外に示している。
いずれにせよ、新首相決定の報を受けるや、国民投票によってEUからの離脱が決まって以降、急落した株式相場や英ポンドも値を戻している。誰の目にも、英国の政治的混乱が思ったほど長期化しない、との観測が広まった結果であることは明かだろう。
残留派であったメイ首相が、EUからの離脱交渉の矢面に立つわけで、きわめて困難な政局運営を余儀なくされるが、本人は、「国民は離脱をはっきりと選択した」と明言し、交渉を長引かせて最終的には残留もしくは再加盟になるのでは、という観測を一蹴した。再度の国民投票も、あり得ないと断言している。
もともと彼女は、保守党主流派に属し、党幹事長、そしてキャメロン政権での内相という立場上、残留派に名を連ねてはいたが、実のところはトルコの加盟などEUの拡大には否定的な見方をしており、心情的には離脱派に近かったと見られていた。
ただ、国会議員の多数派は今も残留派、もしくは離脱派に与したことを後悔している人たちなので、EUから離脱するための法整備を目指しても、法案がすんなり通るとは考えにくい。財界からのプレッシャーもきつく、今後の政局は「進むも地獄、退くも地獄」そのものとなるであろう。
ならば解散総選挙は、と思われた向きもあろうが、そうは行かない。
日本と違って英国は、首相の解散権に厳重な制限が設けられているのだ。2011年任期固定議会法というのがそれで、それまでは首相が解散を決められた(これも厳密には、首相が国王に上奏し、国王が解散を命じる)のだが、この国王大権が削除され、議会の解散は、内閣不信任案が可決するか、議員の3分の2が解散に賛成した場合に限られるのだ。
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