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中国、南沙領有否定されず 仲裁裁判所判決

Japan In-depth / 2016年7月18日 7時0分

中国、南沙領有否定されず 仲裁裁判所判決

文谷数重(軍事専門誌ライター)


12日、オランダの仲裁裁判所で南シナ海問題に関する判断が示された。これはフィリピンの申し立てに基づいた調停の結果である。報道では中国側主張のいくつかが否定されたといったものだ。その内容について、裁判所のプレスリリースによると、要旨は次のとおりとなっている。


中国主張の九段線は法的根拠がないこと。暗礁やその上に建設された人工島は領海や排他的経済水域(EEZ)を発生させられないこと。中国がフィリピンの海洋活動を不当に妨害したこと。環境破壊を引き起こしたこと。そして中国は問題を深刻化させたことだ。


だが、裁定により中国は敗北し、南シナ海での海洋進出は否定されたのだろうか?


それは誤った理解である。中国は南沙の領有を否定されたわけではなく、フィリピンも中国との領土争いに勝利したわけではないためだ。


■南沙領有は否定されていない


まず注目すべきは、裁定は南沙等の領有そのものについて言及しなかったことだ。


否定されたのは九段線の主張や人工島の地位についてである。前者は地図上にU字の線を引き「内側はすべて中国の海だ」としていたものである。後者は暗礁で埋立工事をし、その結果生まれた人工島を根拠にする領海やEEZの主張である。南沙がどこに属するか、あるいはそれが中国に属するかを否定するものではない。


つまり、中国は南シナ海での海洋支配ができなくなったわけではない。個々の岩礁について通常の領有主張は有効であるため、従来どおり岩礁は自国に属すると主張できる。また、人工島についても撤去を求められたわけでもなく、それを利用して実力による海洋支配を続けることができる。


また、裁定は中国不利ばかりではない。唯一、EEZを主張できる規模をもつ太平島を利用し、それを基点にすることで南沙付近の支配を総取りできる可能性もあるためだ。ちなみに太平島は台湾が支配しているが、台湾自身が否定しないように同じ中国であり、しかも中台は南シナ海支配では暗黙の共同歩調にある。


ちなみに「スプラトリー(南沙)にはEEZの根拠となる島はない」といった裁定もさほどの意味はない。「太平島は、人間が居住できない岩礁の集合体であるスプラトリーに含まれない」とでも言い抜ければよいためだ。


もちろん、中国は九段線や人工島の地位についての主張は引っ込められない。中国の行動原理からしても、面子にかけても自己の主張の非は認められないためだ。


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