復活するタリバン アフガニスタンで今何が?
Japan In-depth / 2016年7月21日 18時19分
久保田弘信(フォトジャーナリスト)
9・11アメリカでの同時多発テロ事件、そして、それに続くアフガニスタン戦争。現在まで続く世界の混乱とテロ事件の横行は9・11から始まったと言っても過言ではない。
真珠湾攻撃以来とも言われるアメリカ本土への攻撃はアメリカ市民だけでなく世界を震撼させた。しかもその手法が航空機をハイジャックし、貿易センタービルに激突させるという前代未聞の大規模なテロ攻撃だったから市民に与えた恐怖とテロ団体に対する憎しみは凄まじいものだった。
同時多発テロの首謀者オサマ・ビン・ラディンを匿っているという理由でアフガニスタン戦争が仕掛けられた。ここで、アフガニスタン側の立場を述べる人がとても少ない。日本や欧米ではアルカイダというテロ組織の首謀者を匿うアフガニスタンもテロの温床だという解釈だ。
アフガニスタンのタリバン政権は23年にも及ぶ内戦をようやく終結さえ全土を統一したばかりだった。アメリカの要求に従ってオサマ・ビン・ラディンを引き渡せば攻撃されずに済んだはず。しかし、アフガニスタンにとってオサマ・ビン・ラディンは旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した時、祖国を救ってくれた英雄なのだ。自分たちの立場を考えオサマ・ビン・ラディンを引き渡してしまえば良いのだが、義を重んじるアフガニスタン人にそれはできなかった。
歴史を紐解いていくと、オサマ・ビン・ラディンもサダム・フセインも都合のいい時だけアメリカに利用された側面がある。アメリカは反タリバンの北部同盟を支援する形でアフガニスタン戦争を始めた。
制空権を持たないタリバンにとっては勝ち目のない戦だった。
アメリカ及び先進諸国の思惑通り、タリバン政権は崩壊し、オサマ・ビン・ラディンはパキスタンとの国境沿いへ逃亡することとなった。
テロの首謀者を匿うことはよくないことだ。その結果として為されたアフガニスタン戦争が何を生んだか。一般市民を巻き添えにした爆撃、誤爆が多く、戦争が終わった後のカンダハルにはクラスター爆弾の不発弾が大量に落ちていた。
アメリカの貿易センタービルでは3000人程の尊い命が失われた。
報復攻撃として為されたアフガニスタン戦争で亡くなった人の数はどれほどだろう。戦争での直接的な被害者だけでなく、戦争が起きたことによって食料、医療が滞って生き延びることができなかったアフガニスタン人が大勢いる。その数が語られることはないし、ニューヨークのように追悼式典が行われることも勿論ない。
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