トランプが示した暗く恐ろしいアメリカとヒラリーのパートナー 米国のリーダーどう決まる?その20
Japan In-depth / 2016年7月25日 11時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
4日に渡る共和党大会もついに21日夜に大団円を迎え、ドナルド・トランプが正式に共和党の大統領候補となった。党大会の役割はそもそも予備選を争ったライバルや他候補支持者の気持ちを一つにすることだが、今年の共和党は最後までまとまることはなかった。
トランプ候補の最大の欠点は「何があっても彼だけには投票しない」と公言する共和党員が多いことで、ブッシュ父子の前大統領や前回の大統領候補だったミット・ロムニーも姿を現さなかった。マイナーセレブの他に、ドナルド・トランプを推薦するスピーチを行った一人に、日本でもベストセラーとなった『ゼロ・トゥー・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』の著者ピーター・ティールがいたが、彼は政治的にどちらかといえばリバタリアン的な思想の持ち主なのだが、特筆すべきは壇上で自分がゲイであり、それを誇りとしていると断言したことだろう。
共和党内の保守派はおしなべて同性婚反対で、LGBTの権利など顧みないどころか差別を助長する州法をよしとする者が多い。トランプが副大統領候補に選んだマイク・ペンスも、州知事として地元のインディアナ州で「宗教の自由」の名の下に私企業がLGBTの人たちを差別できてしまう州法に嬉々として署名し、アップルやペイパルなどIT企業が遺憾を表明し、つい先日はインディアナ州で来年のオールスター・ゲームを予定していた全米バスケットボール協会(NBA)が、開催地を変更すると発表したばかりだ。
ティールだけでなく、トランプもLGBTに関しては寛容であり、共和党の保守派とトランプ個人の理念がかみ合わない分野が多い。例えば、共和党は徹底した軍拡と説くが、トランプは自分はイラク戦争には最初から反対だったと主張している(主張しているだけで、その証拠となる発言はないが)。「プラットフォーム」と呼ばれる、党で一致したマニフェストで団結できない分、今回の党大会ではアンチ・ヒラリーを声高に訴えることしか共通項は見出せない。
注目されたのは、トランプの長女イヴァンカが父親を紹介するスピーチだった。ミシェル・オバマの8年前のスピーチを盗用したのがバレた妻メラニア・トランプと違い、イヴァンカはずっと父親の右腕として、ビジネスでも、今回の選挙戦でも目覚ましい活躍をしてきた。美貌の才媛として父親のイメージを和らげてきた。だが壇上に上がったイヴァンカの口から出てきた言葉は、女性の雇用や育児支援、学生の学費軽減と、まるでヒラリー陣営の民主党員が言いそうな政策指針ばかりだったのだ。
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