中国の沖縄での秘密工作とは その1 米調査委員会が暴いた活動
Japan In-depth / 2016年8月10日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
沖縄では中国が米軍基地反対運動をあおり、米軍へのスパイ活動を展開している――こんなショッキングな警告がアメリカ議会の政策諮問の有力機関から発せられた。中国は長期戦略として日米同盟を骨抜きにすることを図り、その具体策として沖縄での米軍基地反対運動へのひそかな支援や米軍の活動への秘密裡の軍事諜報工作を展開しているのだという。
アメリカ側の政府や議会の関連機関が日米同盟の光や影、虚や実について論じ、内外への注意を喚起するという作業は長年、続いてきた。だが沖縄での米軍基地問題に関して中国の干渉を正面から指摘したという実例はきわめて珍しい。アメリカ側としてはそれだけ沖縄での中国の動きを危険視するにいたったということだろう。日本側としては日米同盟の堅固な保持を望む限り、その警告を真剣に受けとめざるを得ないであろう。
日米同盟はこのところ全体として一段と堅固になりながらも、なお沖縄での在日米軍基地への反対運動は複雑な振動を広げている。まるで強壮な人間のノドに刺さったトゲのように、全身の機能こそ低下させないまでも、中枢部につながる神経を悩ませ、痛みをさらに拡大させかねない危険な兆候をみせているといえよう。
沖縄の米軍基地の基盤が揺らげば揺らぐほど、日米同盟の平時有事の効用が減る。日本への侵略や攻撃を未然に抑えるための抑止力が減ることになるからだ。また朝鮮半島や台湾海峡という東アジアの不安定地域への米軍の出動能力を落とし、中国に対する力の均衡を崩すことにもつながるわけである。
沖縄あるいは日本全体を拠点とするアメリカの軍事力が弱くなることを最も歓迎するのは誰か。いまや東アジア、西太平洋の全域でアメリカの軍事的な存在を後退させようとする中国が米軍弱化の最大の受益者であることは明白である。
中国がそのためにソフト、ハード両面での多様な措置をとっていることはすでに歴然としているが、これまで沖縄での反米軍基地運動への中国の関与は提起されることはまずなかった。しかも中国の対沖縄工作の最終目的は日米同盟分断だというのだ。
「沖縄と中国」というこの重大な結びつきを新たに提起したのはアメリカ議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関である。この委員会は2000年に新たな法律により、「米中両国間の経済と貿易の関係がアメリカの国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をする」ことを目的に常設された。議会の上下両院の有力議員たちが選ぶ12人の委員(コミッショナー)が主体となり、米中関係を背景に中国側の軍事や外交の実態を調査するわけだ。
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