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夢中に自覚的であるということ

Japan In-depth / 2016年8月29日 7時0分

夢中に自覚的であるということ

為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

さて、今このコラムを書いているのは7月25日月曜日、京都に向かう新幹線の中です。多くの方々と同じように先週末はPokemon Goでモンスターを100匹ほどゲットしました。久しぶりに夢中でゲームにはまっています。

夢中は競技者としてはとても大切な能力です。夢中になれる力が強ければ強いほど、深く没頭することができトレーニングにしても試合でパフォーマンスするにしても有利に働きます。一方で夢中になることに弊害もあります。昔、こんな質問をもらって考え込みました。

「夢中と依存は何が違うのですか?アスリートでギャンブル依存症だったと診断された人がいたと思うのですが、彼も夢中だったと思うんです。スポーツに夢中になることは素晴らしいと言われ、ギャンブルに夢中になってはいけないと言われる。夢中 と依存は、何が一体違うのですが。それとも違わないんですか」

夢中と依存の違いはなかなかに難しいと思います。両者ともにそれだけで頭がいっぱいになり、やっている間は没頭していて、しかも興奮して面白くて、ずっとそれをやり続けていたい。夢中も依存症も、コントロールが極めて効きにくいのが特徴です。

誰もが、英語の勉強や、ダイエットなど継続が難しいものに夢中になりたいと思っているのですが、つい手元のゲームや、遊びに夢中になってしまいます。人は夢中になる対象を選ぶことが難しいわけです。

私は夢中を二つに分けて考えていました。夢中にさせられている状態と、夢中になっている状態の二つです。前者は誰かによって自分は夢中にさせられているのに対し、後者は自分が自分を夢中にさせていると考えていました。依存症は前者です。自分に拒否権がないからです。

アスリートであれば、競技人生の前半はコーチがついて競技をすることが多いですから、トレーニングメニュー、目標などもすべてコーチが作ることも珍しくありません。そうなると、夢中で競技をやっているようにどの選手も感じています。

ところが、ある年齢(だいたい20歳を超えたあたりですが)を過ぎて自分で目標を決めたり、メニューを決めたりするようになると、途端にどうしていいかわからない選手と、ちゃんとやり切れる選手が出てきます。差はどこにあるか。自分で自分を夢中にさせることができるかという違いです。

私は18歳からコーチをつけないで競技を行うというやり方を選んできました。そのおかげで、大変なスランプにもなり、悩みもしましたが、自分を上手に没頭状態に持って行くというやり方をそれなりに学んだように思います。個人的に気を付けていた内容は下のことです。

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