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次期国連事務総長選 元ポルトガル首相のリード続く

Japan In-depth / 2016年8月30日 23時0分

次期国連事務総長選 元ポルトガル首相のリード続く

植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)

「植木安弘のグローバルイシュー考察」

次期国連事務総長を選ぶ第三回目の仮投票が8月29日に安全保障理事会で行われ、元ポルトガル首相で前国連難民高等弁務官を務めたアントニオ・グテレス氏が前二回の仮投票に続き、トップの座を守った。

仮投票は、拒否権を持つ常任理事国と非常任理事国との間に差をつけないこれまでと同じ、「奨励する」、「奨励しない」、「意見なし」の選択肢から選ぶ方式で行われた。事務総長は、安全保障理事会の勧告の下に総会で任命されるため、常任理事国の拒否権が行使されない候補者でないと選出されない。

グテレス氏の投票結果は、「奨励する」が前回と同じ11票だが、「奨励しない」票が前回の2票から3票に増えた。「意見なし」が前回の2票から1票になったため、減った1票が「奨励しない」に回ったことになる。問題は、「奨励しない」票に常任理事国が入っているかどうかだが、これは現時点では不明である。

第二位には、第二回の仮投票で最下位に近かったスロバキア外相のミロスラフ・ライチャック氏が浮上した。「奨励する」が、前回の僅か2票から、一挙に9票に増えた。「奨励しない」は6票から5票へと1票減っただけだが、「意見なし」が7票から1票に減ったため、その分支持票に回ったことになる。

ライチャック氏は、モスクワ国立国際関係研究所を卒業しており、若き外交官として1990年代当初チェコスロバキア―スロバキア(1992年に分離独立)のモスクワ大使館に勤め、1994年から1998年まで日本大使も務めている。2000年代にはバルカン問題も手掛け、2005年には、ブラチスラヴァで開催された米ロ首脳会談をサポートした。職業外交官として政治色はないが、2012年から副首相兼外相を務めている。英語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、バルカン諸国の言語にも通じていると紹介されている。ただ、ウクライナやモルドヴァなどとのEU加盟交渉などにも関わっており、ロシアが支持するかどうかは分からない。

第三位には、ブルガリア出身でユネスコ事務局長のイリーナ・ボコヴァ女史とセルビアの元外相のヴュク・イェレミッチ氏が追い、アルゼンチン外相で元国連事務総長官房長を務め米国が支持しているスザナ・マルコーラ女史は、前回の第三位から第五位となった。

元ニュージーランド首相で国連開発計画(UNDP)事務局長のヘレン・クラーク女史や元マケドニア外相のスルジャン・ケリム氏も六位に低迷している。また、第一回で二位につけていた元スロベニア大統領のダニロ・トゥルク氏は八位と支持を落としている。

次期事務総長候補は、当初の12人から10人に減っており、今回の仮投票を受けて下位の候補から更に脱落者が出てくるものと思われる。しかし、上位候補者が全て「奨励しない」票を最低3票受けているため、この中に常任理事国が入っていると選出されないことになる。幕裏での駆け引きが益々激化することが予想され、9月には候補者が絞られていくことになるだろう。

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