移民対策で二転三転 トランプの迷走 米国のリーダーどう決まる?その24
Japan In-depth / 2016年9月6日 23時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
ドナルド・トランプの迷走が止まらない。共和党予備選の頃から彼のスローガンとさえなっている、(メキシコとの国境に)「壁を作る!」「メキシコに払わせる!」という、強硬移民政策そのものが揺らいでいるからだ。
先月半ばにスタッフを入れ替えて以来、選挙対策本部長に据えたケリーアン・コナーに、女性票を獲得するためにも、もう少しソフト路線に転向しろ、モノの言い方に気をつけろ、スピーチではちゃんとプロンプター通りに読め、と諭されたのだろう。党大会以降、下がる一方の支持率に歯止めをかけられるなら、と一旦は納得したようだ。
不法移民の子供としてアメリカで生まれ育った「ドリーマー」と呼ばれる層まで国外追放にするのかと聞かれて、必ずしもそうではないと答えたところから、一部メディアからは「アムネスティー(恩赦)ドン)」とからかわれ、ソフト路線に転向した揶揄され、トランプは「いや、これはむしろハード路線だという人もいる」とトンチンカンな答えを口にした。(英語で言えば、このsofteningという言葉、EDを指す言葉でもあり、マッチョであることにこだわるトランプにしてみれば、いちばんやりたくない、言われたくないことなのだろう。)
そこに突然降ってわいたようなメキシコ訪問。エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領に招待されたので、会いに行くという。そのニエト大統領、不況が続き、麻薬カルテルの犯罪も一向に減らせず、国内問題も山積みなため、支持率が20%を切るほど不人気の人物なのだが、トランプは、海外のトップと並んで演説台に立つという「大統領っぽい」ところを見せたかっただけなのだろう。
当然のように「国境の壁」はどうなったのか?と「メキシコが払うのか?」とマスコミに水を向けられ、しれっと「話題に上らなかった」「誰が費用を払うのかは後で話せばいいことだ」と答えた。もちろんニエト大統領は「はっきり、壁建設のためのカネなど支払うつもりはないと告げた」としている。トランプ訪問はメキシコの国民からも非難轟々で、どうやら、どうせ来るはずはないだろうとタカをくくっていたところに、本当に来ちゃった、というのがニエトの本音だろう。
その記者会見で、トランプはメキシコとの国交をおだて上げた数時間後にアリゾナ州で決起大会を催し、これまで以上とも受け取れる違法移民追放への決意を新たにしたのだから、開いた口がふさがらない。
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