「男系の伝統」の本質を問う 知られざる王者の退位 その8
Japan In-depth / 2016年9月7日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
8月26日深夜(正確には日付変わって27日に放送されたが)、TV朝日系の『朝まで生テレビ』で、天皇の生前退位の問題を取り上げていた。番組内では、司会の田原総一朗氏をはじめ、大半の出演者が「譲位」という言い方をしていたが、これは、わざわざ「生前」退位と呼ぶこと自体が不敬だとの声に配慮したものであったろうか。
そもそも天皇の地位は崩御と同時に世襲される、という規定を変えるべきか否か、という議論なのであるから、生前退位と呼んだ方が分かりやすいと思うが、これはあくまで私個人の考えである。それはさておき、この討論番組は、途中から女性天皇を認めるか否か、という議論に変わってしまった観があった。無理からぬ面はあると思う。
と言うのは、各種世論調査によれば、国民の80%以上が生前退位に賛成しており、番組のパネリストの中にも、正面切って「天皇の地位は終身のもの=生前退位は認められない」と主張する人などいなかったからである。
ただ、本シリーズではすでに指摘済みのことではあるが、皇室典範を改正せねばならないとなると、退位後の天皇の呼称から元号まで、クリアせねばならない問題があまりに多いので、今上一代に限っての特別立法という方向に収斂されて行くと思われる。少なくともこの予測と矛盾する情報はもたらされていない。
ただ、こうした方法が採られた場合、皇太子がいなくなる、という問題が新たに浮上してくる。秋篠宮は「皇太弟」にはなり得るが、天皇の子供ではないので、皇太子とはなり得ない。その次の世代となると、男子が一人しかいない、という現実に直面するわけだ。
そこで「女性天皇」「女性宮家の新設」が検討されているわけだが、番組では、明治天皇の玄孫だという竹田恒泰氏が、「女性天皇は、女系天皇への入り口になる」と主張し、反対意見を表明していた。ではどうするのか、という田原氏からの問いに、「男系の旧皇族から養子を迎えられるような制度にすればよい」と答え、ヒンシュクを買っていた。何親等離れた養子になるのか、というわけだ。
意外に思ったのは、安倍政権による憲法改正の動きに反対して政治団体まで起ち上げた、憲法学者の小林節氏が、「2000年の男系の伝統は、軽々しく変えない方がよい」と主張したことで、この問題は保守とかリベラルとかいう区別を超えた、国家観・歴史観の問題なのだと、あらためて認識させられた。
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