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北朝鮮核開発、宥和政策の限界

Japan In-depth / 2016年9月14日 11時0分

北朝鮮核開発、宥和政策の限界

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)


「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月12-18日)」


今週の注目は何と言っても、北朝鮮の核実験強行だろう。これまではほぼ三年に一度の頻度だったが、今回の実験は前回から8カ月しか経っていない。このタイミングに驚いた専門家は少なくなかった。9月9日09時のゾロ目に注目する識者もいる。しかし、筆者はむしろ、北朝鮮の声明が言及した「戦略核兵器部隊」に興味がある。


夏祭りの打ち上げ花火じゃあるまいし、北朝鮮は建国記念日のため核実験を続けているのではない。同国は1990年代から一貫して「戦略兵器」、すなわち「国家の生き残りのための核ミサイル」の開発を目指してきた。今回も、核兵器開発のスケジュールが、運良く、建国記念日に間に合ったに過ぎないと見るべきだろう。


今回の実験の真の恐ろしさは、北朝鮮が従来の非難声明、経済制裁やその延長上の措置では方針を変えそうもないことが明確になったことだ。中国は北朝鮮の生命維持装置を外す気がないし、韓国も本気で北朝鮮の核開発を武力で阻止するつもりなどない。米国だって、北の南進でもない限り、北朝鮮問題には軍事介入しないだろう。


 


〇欧州・ロシア 


16日に非公式EU首脳会議がスロバキヤの首都で開かれるが、何故か、というよりも当然ながら、英国は参加しない。17日にはドイツで大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(Transatlantic Trade and Investment Partnership、TTIP)に反対するデモが開かれる。これだけ見ても欧州の混乱は当面続きそうだ。 


〇東アジア・大洋州


北朝鮮の核実験に関する本邦各紙の社説はどれも似たり寄ったり。暴走阻む抑止力強化を(産経)、暴走脅威に冷静対処を(讀賣)、体制脅かす強い制裁を(日経)、自らを窮地に導く暴挙(朝日)、国際包囲網もっと強く(毎日)、核武装は断固許さない(東京)・・・。どの新聞も戦争を恐れてか、最終究極の手段については沈黙している。


これは典型的な「宥和政策」なのだが、古今東西、宥和政策だけで敵対者の邪悪な意図を翻意させることは出来なかった。武力による解決しかないなどと言うつもりはない。中国が北朝鮮を緩衝国として維持する限りは、武力による解決もあり得るという強いメッセージなしに、宥和政策だけで北朝鮮の核開発を止めることは不可能に近いだろう。


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