潘基文氏は国連で何をしたのか その2 ハーバード大留学でも英語が下手
Japan In-depth / 2016年9月16日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
国連事務総長ポストは任期5年、大きな支障さえなければ再任が認められる。選ばれる人物の出身はヨーロッパ、中東、アフリカなど各地域を毎回、順番に変えていく慣習があり、韓国の潘基文氏が立った時はアジア地域からの事務総長が選ばれることが内定していた。だから潘氏の対抗馬はインド人の国連事務次長、タイ人の元副首相、スリランカ人の元国連事務総長だった。
潘氏は2006年10月、国連の安全保障理事会、総会いずれの選挙でも最多票を得て、当選した。アメリカをはじめとする安保理常任理事国がみな支持したことが大きかった。ところがわが日本政府も早々と潘氏支持を表明していた。時の麻生太郎外務大臣は「アジアとして誇らしい」とまで述べて、潘氏の事務総長当選を歓迎したのだ。潘氏はこれを受けて「日本とは緊密に連携、協調していきたい」と語った。だが実際の展開は大きく異なったのである。
潘事務総長は2012年には再任を認められた。だが潘氏のこれまで通算ほぼ10年に及ぶ勤務ぶりは酷評また酷評なのである。国際機関の代表を務める人物へのこれほど一致し、かつ徹底した悪評というのは珍しい。潘氏は国連が戦後にスタートしてから8代目の事務総長である。だがその8人のなかでもまったくの異端といえるほど、飛びぬけて評価が低いのだ。
その潘氏への採点をまず前述の第一の視点、つまり国連での基準、国際的な尺度からみていこう。この視点での指摘も複数の領域に分けられる。
まず第一は能力である。適性や資格の有無ともいえるだろう。
潘総長は国連の内部報告でも「事務局を腐らせた」と批判された。2010年7月に国連事務次長のポストを辞めてすぐのインガブリット・アレニアス氏が「潘事務総長の実務、倫理の両面での指導能力欠落のために事務局自体が腐敗し、倒壊しつつある」という趣旨の報告書を作成したのだ。当初は内部だけの資料のはずのこの報告書の内容は外部にも流れた。
「潘総長の国連の基本的政策に関する判断の曖昧さや、人事面での不公正が国連全体をも無意味、非効率にしている。潘総長のコミュニケーション能力にも深刻な欠陥がある」
こんな容赦のない潘総長批判を明確にしたアレニアス氏はスウェーデンの外交官出身で国連勤務も長かった。2010年春までは潘氏の部下にあたる「事務次長」の要職にあった。だから潘氏に対する酷評は至近からの実際の観察に基づいていたわけだ。
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