潘基文氏は国連で何をしたのか その3 縁故と偏向と
Japan In-depth / 2016年9月17日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
潘基文国連事務総長への採点評価での第二の基準は公正さ、である。国連事務総長としての中立性の有無ともいえよう。
だが潘氏は総長としてのネポティズム(縁故主義)をも批判されてきた。まず潘氏が事務総長になってすぐ自分のスタッフや国連事務局高官として韓国人を大幅に優先して採用したことが指摘された。国連事務局での韓国のプレゼンスは従来それほど大きくはなく、潘氏の就任半年前の時点では韓国人の職員は54人だった。
ところが潘氏が就任して一年ほどの間にその韓国人の数は66人へと急増した。一年ほどで20%の増加だった。新しい国連事務総長が登場すれば、その総長を輔佐する新しい補佐官などを総長の出身国から採用することは奇異ではないが、韓国の場合の二割増加というのは規範を越えていた。
しかも新採用された韓国人たちは外務省など本国政府の高官が多く、国連事務局で新配置されたポストも枢要な地位が目立った。だから潘氏の過剰な縁故採用という批判も起きたわけだ。その結果、ニューヨークの国連本部ビル38階にある事務総長のオフィスは上級顧問職などに韓国政府出身者がとくに増えたうえ、オフィスの壁にはサムスン電子製の薄型テレビがびっしりと並べられたという。
潘総長に対しては自分の義理の息子を不当に抜擢したという批判も浮上した。2013年末に潘氏の次女の夫、インド人のシダース・チャッタジー氏がケニヤのナイロビの国連人口基金のトップに任じられたことがその焦点だった。インドの軍人出身のチャッタジ―氏はそれまで国連とは直接の関係のない国際赤十字の本部に勤めていた。この抜擢ぶりが国連事務局内部で「縁故主義」の非難を招いたのだ。
その他、潘事務総長の実績を「公正か、中立か」でみても、とにかく厳しい評価だけが浮かびあがる。前述のノルウェーの国連次席大使だったジュール氏のメモも、新総長が国連の本来の中立という基準を破り、偏向のあらわな特徴を総括して、次のように述べていた。
「潘総長は最近のダルフール、ソマリア、パキスタン、ジンバブエ、コンゴなどでの危機に対しても気概のない、魅力もない対応しかできなかった。これら各地での紛争では国連はまったくリーダーシップを発揮できなかった。また潘氏は国連安保理の常任理事国に対してきわめて弱い対応しかとれていない。ところが中小国家だけの争いでは猛然と高圧的な言辞をときおり吐いたりする」
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