日本の社会科学が国際化できないわけ
Japan In-depth / 2016年10月1日 11時0分
これは、「甘え」という概念は日本特有ではなく韓国にもある、という議論だったというが、肝心なのは、この反論に応じることにより「甘えの構造」がほかの研究者により練られ、ある程度の普遍性を有する日本発の理論となりえたことである。結果、報告書の指摘する通り、日本の社会学は「国際マーケット」の「バイヤー」であるばかりで、「生産者」になりきれずに近年まで至った。
それでも日本の社会科学がある種の光を放ってこれたのは、日本が最初の非欧米近代国家であったからだ。つまりそこは、国際的には、実証研究の実に豊かなフィールドであり、理論を生産しなくてもJapan modelという「実証」を売っていればよかった。だから日本は注目され、たくさんの日本研究者に愛されてきた。しかしとっくに日本は「唯一」の国ではなくなった。
一方で、海外にフィールド研究の場を求めたところで、日本独自に発展を遂げた欧米理論による分析では、国際的な議論には参加しにくい。すると既存の研究を翻訳することが、本当に問題の解決となり得るだろうか。こう考えると、実は日本の社会科学の問題は、日本という国の国際社会での生き方の問題と重なってくるのである。
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