ドゥテルテ大統領、反撃開始 批判勢力急先鋒電撃解任
Japan In-depth / 2016年10月9日 19時34分
ことの重大性をドゥテルテ大統領側も認識したのか動きは素早く、アンダナー大統領府報道班長が「市長(ドゥテルテ)にいかなる犯罪容疑者の殺害指示の権限もなく、市長自身が殺害に関与した事実はない」と全面的に証言内容を否定した。
だがドゥテルテ大統領陣営は否定による単なる事態の沈静化だけに留まらず、一気に反撃にでた。その標的となったのがこの聴聞会を開いた上院法務委員会の委員長を務め、前アキノ政権で司法長官まで歴任、ドゥテルテ大統領による超法規的殺人を一貫して批判してきた、いわば反ドゥテルテ派急先鋒の一人でもある女性政治家デ・リマ上院議員、その人だった。
■麻薬王との癒着から不倫ビデオまで公開
9月19日、処刑団元メンバーの爆弾証言から4日後、フィリピンを代表するプロボクサーで上院議員でもあり、ドゥテルテ大統領と親密な関係にあるとされるパッキャオ上院議員が上院司法人権委員会の再編を発議、事前に根回しができていたのか、あっという間に委員長デ・リマ議員はその委員長職を解任させられた。そして翌日の20日、新たな委員長の下で開かれた麻薬犯罪に関する同委員会聴聞会は、それまでの「超法規的殺人」を審議する場とは一変、デ・リマ議員糾弾会議となった。
モンテンルパ刑務所に服役囚の麻薬王とされる人物がデ・リマ議員に麻薬取引の売上金から少なくとも7000万ペソを上納したと証言。デ・リマ議員と元専属運転手が不倫関係にあり、この運転手が上納金を運んだことまで明らかにされた。
さらに追い打ちをかけるように刑務所での麻薬王主催のパーティにデ・リマ議員が参加して歌を歌うビデオや不倫相手の元運転手とのベッドシーンのビデオまでが一部マスコミを通して公表されるなど公私にわたってデ・リマ議員を追い詰める結果となった。
しかし、2009年当時からフィリピン人権委員長としてダバオ市長だったドゥテルテ大統領の超法規的殺人を追及してきたデ・リマ議員は窮地に追い込まれながらも、故マルコス夫人のイメルダ下院議員に代表されるフィリピン女性政治家の強さとしぶとさで懸命に抵抗を続けている。
デ・リマ議員は「不倫は個人的なこと」としてコメントを拒否し、その他のことに関しては「私に不利な証言をした証人は大統領府に弱みを握られ服従させられているのだ」と公平性に疑問を投げかけ、背後にドゥテルテ大統領の存在を強く示唆、政治的陰謀との見方を強調。上院の委員長解任も「(ドゥテルテとの)闘いに命を捧げた私の信念を犠牲にするほどの価値は(委員長職には)ない」としてドゥテルテ大統領追及の手を緩めない姿勢を示している。
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