自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その1 情報編
Japan In-depth / 2016年11月4日 11時32分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
昨年の安保法制改正にともない、自衛隊がPKO活動などで他国の部隊や民間人などが襲撃を受けた際に、これを武力を持って救援する、いわゆる「駆けつけ警護」が可能になった。安倍首相は、自衛隊は軍隊と同じであり、法律さえ変えれば「駆けつけ警護」といった「かんたんな任務」はこなせて当たり前と思っているのだろう。だがいくら法律が変わっても自衛隊にその能力はない。自衛隊は軍隊として実戦ができない組織だ。自衛隊の現状のまま「駆けつけ警護」をやらせれば他所の国の軍隊の何倍もの死傷者を出すことが予想される。
手足がもげ、一生義手義足、車椅子で生活する、あるいは視力を失って白い杖をついて一生を終わる隊員が続出する可能性がある。政治と行政の無策で戦死者、重度の身体障害者を量産するだけに終わるだろう。それらは政治家と防衛省が真摯に「軍隊」として戦う体制を構築すれば防げる被害だ。政治家、特に与党の政治家たちには脳天気にも自衛隊=軍隊という誤った認識しか持っていない。単に国益とか、国際貢献とか口当たりのよい言葉に酔って実戦を安易に考えているのではないか。
筆者は駆けつけ警護自体を否定するものではない。国益を鑑みて、PKOやPKFに部隊を出すことは奇異なことではない。また軍事作戦において犠牲がでることは当然であるとも考える。だがそれは自衛隊が軍隊と同等の能力と当事者意識を持ち、政府と防衛省が、現場の部隊が遭遇するであろう危険に対して最大限に対策を取らせてはじめて行うべきだ。自衛隊の現実の戦闘をあたかも映画かゲーム程度の認識で、安っぽい国家意識や愛国心から安易に自衛隊を戦闘に投入し、隊員を犬死にさせるべきではない。
率直に申し上げて、自衛隊と軍隊はナリが似ているだけで、全く異なる組織だ。それは自衛隊が全く実戦を想定していない、パレード用の軍隊でしかないからだ。故吉田茂はかつて、「自衛隊は戦力なき軍隊である」と述べたが、自衛隊の実態はその言葉そのものである。警察予備隊発足当時からソ連崩壊に至るまで、自衛隊が期待されたのは西側の一員としての一定規模の「軍隊らしき」組織として存在することだった。商売の見せ金のようなもので、実際に戦争をすることは期待されてこなかった。つまり、なんとなく「軍隊らしい」存在として西側世界の軍事力のカサを上げる存在であればよく、実戦を行うことを全く想定してこなかった。
この記事に関連するニュース
-
海自ついに導入「シーガーディアン」一体どう使うの? 新たな“空の眼”となる無人機 減っていくかもしれない有人機とは?
乗りものニュース / 2024年11月24日 7時42分
-
領空侵犯への備え続く航空自衛隊 “空を守る”厳しい訓練
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月23日 17時52分
-
海保の無人偵察機に「吊り下げる謎のハコ」公開 武器?燃料タンク? 市民生活に直結する「意外な使いかた」とは
乗りものニュース / 2024年11月13日 9時42分
-
自衛隊「対敵特殊部隊」訓練が非現実的な理由 特殊部隊が侵入できない日本の現実を考えていない
東洋経済オンライン / 2024年11月10日 9時30分
-
「領空侵犯を阻止せよ」防衛最前線のF―2戦闘機パイロット 訓練に密着 福岡・航空自衛隊築城基地
RKB毎日放送 / 2024年10月31日 17時8分
ランキング
-
1池袋暴走事故の飯塚幸三受刑者(93)が死亡 松永拓也さん「後悔や経験の言葉を託された。死を無駄にしたくない」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月25日 11時38分
-
2ALS嘱託殺人 被告の医師に2審も懲役18年 大阪高裁が控訴棄却
毎日新聞 / 2024年11月25日 10時51分
-
3高市早苗氏はいつ「タカ派政治家」になったのか…「ポスト石破」に一番近い女性政治家の"克服すべき弱点"
プレジデントオンライン / 2024年11月25日 8時15分
-
4【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
NEWSポストセブン / 2024年11月25日 7時15分
-
5「佐渡島の金山」の追悼式には不参加 韓国側が佐渡市で独自の追悼行事 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年11月25日 12時1分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください