警察・司法こそ「構造改革」が必要 自壊した日本の安全神話 その10
Japan In-depth / 2016年11月9日 7時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
個人的な話で恐縮だが、某県警から通訳の仕事をしないかと打診されたことがある。これも個人的な事情で、お断りせざるを得なかったが。近頃は大都市に限らず、日本語が通じない犯罪者が摘発される例が増えていて、地方の警察も手を焼いているのだろう。もちろん、研修の名の下に不法就労させているとか、どちらかと言えば雇用主たる日本人の責任こそ第一に問うべき、という事案も少なくないのであろうが。
その話はさておいて、ここで私が言いたいのは、日本の警察機構が、グローバルな現在の治安状況に、もはやついて行けなくなっているのではないか、という危機感である。あまり知られていない事実だが、日本は、犯罪容疑者の引き渡し協定を、米国と韓国との間にしか締結しておらず、先進国の中でも際だって「孤立」している。
それ以上に、自治体警察の体制が改められておらず、複数の都道府県にまたがって、連続して起きた事件に関しては、捜査の進捗がしばしば非常に遅い。私は、日本版FBIを創設することで、こうした構造的な欠陥を是正できる、と考えるものである。
もともとFBI(連邦捜査局)とは、アメリカ合衆国特有の制度と考えられてきた。かの国では、なにしろ州によって法律が違うくらいなもので、具体的にはヒッチハイクが合法だったり非合法だったりする。当然ながら警察も州単位で組織されており、複数の州にまたがる犯罪に対処するのが困難であった。そこで、各地域で任命される保安官(今も警察署長はこう呼ばれることが多い)とは別に、大統領直轄の捜査機関を設けた。つまりは、建国直後からの歴史を持つのだが、現在の名称となったのは1935年である。また、彼らには捜査・逮捕権はあるが訴追権はない。
日本の場合、警察庁という官庁が置かれてはいるが、実際の警察活動は警視庁などに丸投げの状態で、多くの人が治安の悪化を憂えているにもかかわらず、警察官僚の権限ばかり肥大しているというのが実情だ。こういう状態を改めるには、警察庁直轄の捜査機関をまず設け、外国語堪能であったり法医学の知見を備えた捜査員を集中的に配置して、初動から広域捜査の態勢がとれるようにするのがよい。これがすなわち、日本版FBIというわけだ。
米国のように、起訴する権限を与えないという方法が本当によいか否か、即断はしかねるけれども、取り調べの可視化など、冤罪に対する抑止効果が期待できる制度改革は急がなくてはならない。同時に私は、旧来の自治体警察の良さも生かし続けるべきだと考えている。
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