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自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない。その3防御力編 前編

Japan In-depth / 2016年11月9日 10時22分

自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない。その3防御力編 前編

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

 

自衛隊部隊の防御力も問題だ。諸外国と比べて極めて劣悪である。自衛隊のヘルメット、88式鉄帽は砲弾の破片に近似した弾速の拳銃弾が命中した際、10センチほど凹む。対して同時代に米軍のそれは、その拳銃弾よりも弾速が速いトカレフ拳銃弾で撃たれても凹みは2.5センチ以内である。無論ヘルメットが想定しているのは主として砲弾の破片などからの頭部の防御だが、防御力が劣っていることは間違いない。貫通しなくとも、10センチもヘルメットが凹めば頭蓋が潰れてしまうことはいうまでもない。ところが陸幕は貫通しないからよし、と採用したのだろう。

80年代以降、軍用ヘルメットの主流はアラミド系繊維を樹脂で固めたものが主流となってきたが、現代ではより軽量なポリエチレン系繊維を使用したものが主流となっているが、これまた自衛隊では採用されていない。また陸自のヘルメットのライナーは旧来型のハンモック式である。米国やフランスなど先進国では既に、ヘルメットの内側に独立したクッションを貼り付けるタイプのライナーになっている。この種のパッドは爆風の侵入を防ぎ、被弾時の衝撃を大きく緩衝し、脳の受ける損傷を極小化できる。

またストラップも固定式だ。このタイプは爆風を受けた際に、頭部とヘルメットの内側の隙間から侵入した爆風が頭頂部で収束し、その部分の気圧が急激に高くなり頭蓋を潰してしまうおそれがある。また爆風を下から受けた場合にヘルメット下部が爆風で頭ごと引っ張ることになって、頸部を損傷する原因となっている。これまた諸外国では一定の圧力がかかるとはずれる仕組みになっている。防弾チョッキのデザインも諸外国のものと比べると設計思想が遅れており、上腕部、肩部、脇や胴体下部からの被弾に脆弱である。

諸外国では目の保護のためポリカーボネート製のサングラスを採用している国が増えている。これにより、破片などによる眼部の損傷や失明をかなり削減できるが、陸自ではこれまで贅沢品、ファッションに過ぎないと採用してこなかった。ハワイにおける迫撃砲の射撃では防ぎ得た失明事故が発生している。それにも関わらず改善がなされていない。このため戦闘によって失明する隊員が発生する率は、他の先進国の軍隊よりもかなり多くなるだろう。

更に申せば、先進国では今まで無防備だった顔面を防御するためのフェイスガードの採用が進んでいる。昨年英陸軍は新型個人装備としてリビジョンカナダの、フェイスガード付きのヘルメットを採用している。今後このような軍隊は増えていくだろう。

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