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自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない。その3防御力編 前編

Japan In-depth / 2016年11月9日 10時22分

被服にも問題がある。自衛隊の迷彩戦闘服は難燃性のビニロンを使用しているが、世界で筆者の知る限りビニロンを戦闘服に使用している国はない。実は難燃性もそれほど高くない。ビニロンは国内で開発された繊維であり、この使用を前提とするのは非関税障壁の一種ではないか。自衛隊は他国の難燃繊維と比較したのか極めて疑わしい。もし難燃性のビニロンが戦闘服用として極めてすぐれているのであれば、何故外国で採用されていないのだろうか。

本年3月1日に公正取引委員会は防衛省や防衛装備庁が発注する自衛官用の戦闘服などの入札で談合を繰り返していた疑いがあるとして、独占禁止法違反容疑で、大手繊維メーカーのユニチカ(大阪市)とクラレ(同)の各東京本社へ立ち入り検査を行った。ビニロンは、50年にクラレが初めて製品化した合成繊維である。難燃性ビニロンを製造しているのは、国内ではクラレとユニチカの2社しかない。ビニロンは染料のノリが悪く、色落ちし易いという欠点がある。このためグリーン系迷彩である陸自の迷彩は色落ちしてすぐに茶色になる。つまり迷彩効果がなくなる。仮に難燃性に問題がなくても、迷彩効果が落ちるのでは戦闘服として落第だ。少なくとも筆者はこれほど色落ちが激しい外国製の戦闘服を見たことがない。何故このような繊維を使い続けるのか。

因みに米軍はテンカート社の開発した難燃繊維、ディフェンダーMを採用しているが、帝人はディフェンダーM原料の一つであるアラミド繊維を供給している。また同社は同様な耐火繊維、コーネックスを開発、販売している。だが、防衛省が真摯にこれらの耐火繊維を使用した戦闘服の開発を行ってきたようには思えない。防弾チョッキでも世界のアラミド繊維2位で、より軽量な高分子ポリエチレン系の繊維も販売している帝人は防衛省から締め出され、東洋紡と東レが市場を寡占している。これも常識的にみれば極めて奇異であろう。

また下着も本来難燃繊維を使用すべきだ。耐火下着用としてポピュラーな難燃繊維は登山用などでも多用されているメリノウールである。一式1万円以上もするが、合成の難燃性下着も決して安くはない。ユニクロが繊維業界と共に開発したクールマックスやヒートテックなどの機能性繊維は耐熱機能がなく、被弾などして被服が燃えた際に繊維が熱で溶解して、やけどした皮膚に付着する。これはやけどの治療を著しく困難にさせる。一般用のフリースも同じで軍用のフリースは溶解しないものが使用されている。本来実戦に出す部隊は下着も難燃性ものを支給すべきだが、自衛隊にその気は無いようだ。隊員の生存性や命を安く考えすぎているのではないか。

そもそも自衛隊は貧国でも支給しているセーターすら支給していない。欲しい隊員は自費で賄うことになっている。この為、東日本大震災では、長期に渡って現地で働いた隊員たちの多くは死臭が染み込んで汚れたセーターを取り替えることもできなかった。防衛省や自衛隊首脳部はセーターを支給するカネがもったいないと思っている。軍隊とすればこれは極めて異常である。そのくせ諸外国から比べて8倍も10倍も高い装備を買うことには疑問を感じず、当然のように調達している。まさに自衛隊の常識は世界の軍隊の非常識だ。

(その4に続く。その1、その2。全5回)

トップ画像:英陸軍が採用した個人装備セット。左は防護用のサングラスを装備し、右はフルフェースのヘルメットを装備している。©清谷信一

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