オバマの否定でトランプ勝利
Japan In-depth / 2016年11月20日 22時55分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
アメリカ大統領選での共和党ドナルド・トランプ候補の民主党ヒラリー・クリントン候補に対する圧勝は全世界に衝撃波を広げた。アメリカでも、そして日本を含む諸外国でもこの戦いはクリントン候補が確実に勝つだろうと予測されていたからだ。
だがアメリカ国民の多数派はトランプ候補の支持という道を選んだ。トランプ氏は各州を代表する選挙人の人数ではクリントン候補を圧したが、一般得票数では僅差とはいえ、より少なかった。だが大統領選挙の勝敗はあくまで各州選挙人の合計で決まる。両陣営もその方法を熟知したうえで選挙戦を推し進めるから、一般得票でたとえ優位に立っても意味がないのである。
さてトランプ氏は当初は暴言や放言を繰り返し、政策論も明確には語らなかった。もっぱらクリントン氏の欠陥や弱点、醜聞を叩くネガティブ・キャンペーンに終始した。だから彼がなぜ勝ったのかの分析は難しい。当のアメリカでもまだまだ無数の専門家たちが試行錯誤の原因探究を続けている。だが一つだけアメリカの各方面で明確にされてきたのは、この選挙でトランプ氏はクリントン氏に勝ったというよりも、実はオバマ大統領に勝ったという実態である。この点、日本での分析はまだそこまで検証の光が届いていないようだ。
アメリカ国民の多数派はなぜトランプ氏を支持したのか。その理由の説明で最も広く受け入られているのは「国民が現在のアメリカの状態に不満を抱き、怒りを感じたからだ」という趣旨である。つまりは現状への怒りというわけだ。
ではその現状をつくり出したのはだれか。だれかひとりにその責任をしぼるとすれば、いうまでもなくオバマ大統領である。オバマ大統領が政権を握り、最高指導者として8年間も統治を続けてきた。その結果の現在のアメリカの政治、経済、社会、文化などの特徴はオバマ政権の8年間の国の運営の仕方の帰結だろう。
いまのアメリカの現状については「貧富の差の拡大」「社会の分裂」「白人中間層の沈滞」というような特徴が指摘されてきた。いずれもオバマ政権の政策の結果としか考えられないだろう。そうした現状へのいわゆる普通のアメリカ国民の間の怒りが高まり続けたわけだ。
トランプ氏はこの現状に同じように怒りをぶつけ、叩いたのだ。そして多くのアメリカ国民、とくに所得だと中低層、教育程度だと高校卒の白人労働者を主体とする人たちがどっとその怒りのメッセージに同調したわけだ。というよりもそうした現状不満層の怒りをトランプ氏がすくいあげたということだろう。
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