家族分断のサンクスギビング どこに向かう?アメリカ その3
Japan In-depth / 2016年11月27日 7時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
11月第3週の木曜日にやってくるアメリカのサンクスギビング・ホリデーといえば、日本のお盆かお正月のようなもので、とにかく家族親戚みんなで集まり、丸焼きの七面鳥を囲んで日頃の幸せに感謝する日、ということになっている。広い国なので、移動距離も半端ない。日本だと電車のラッシュや車が渋滞するところが、ここでは阿鼻叫喚が上がるのは空港の出発ゲートだ。
今年特に「全米が泣いた」のは、普段都会に住んでいる若い世代が故郷の田舎町に帰り、そこで今年の大統領選でどちらに投票したかで言い争いになるのが怖い、ということだ。ドナルド・トランプに一票入れたのか、ヒラリー・クリントンを応援していたかで、家族離散、親子断絶、兄弟げんか…お互い感謝するどころではなかったかもしれない。親戚でなくとも、未だにトランプ政権誕生を受け入れられない人々がアメリカには大勢いる。
獲得総票数では多いのに、その票が都市部に集中したために獲得選挙人数では負けるという、アメリカの選挙人制度に「ねじれ」が出たのは今回が初めてではなく、2000年にもわずかだが、獲得票総数で上回ったアル・ゴアではなく、選挙人数で勝ったジョージ・ブッシュが再選された。今回の大統領選挙では、今のところその時の差の3倍に当たる200万票をヒラリー・クリントンがより多く獲得している。
各州の選挙人が正式に自分の州を勝ち取った候補に投票するのが12月18日なので、この日に選挙人が寝返れば、クリントンが当選ということも理論上はありえる話だ。だがそのためには20人近くが、州民の多数決に逆らう一票を投じなければならない。罰金などの実刑がある州もあるが慣例どまりの州がほとんどだ。第一にそんなことをすれば、クリントン支持者は喜んでも、共和党からのバックラッシュを免れない。怒ったトランプとその白人至上主義の過激な支持者が暴れるだろうことは想像に難くない。
もう一つの動きは、僅差のミシガン州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州で票の数え直しをするというものだ。なんと、第3党のグリーン党から出馬したジル・スタインも再開票を支持して募金まで行っている。
僅差の場合、負けた候補者や支持者が数え直しを求めるのは合法であり、州によってはそれまでカウントされていなかった不在者投票や海外の軍人の分を初めてそこで数えるところもある。また、伝統的に有権者登録の際の名簿の一致や身分証提示の不手際で割りを食うのは、統計的にマイノリティーや最近市民権を獲得した移民に多いことが調査の結果でわかっているので、数え直しは民主党に有利に動くことが多い。
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