インドネシアでクーデター未遂? 大規模デモ当日著名人逮捕
Japan In-depth / 2016年12月3日 23時54分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
インドネシアの首都ジャカルタで12月2日、イスラム強硬派によるジャカルタ特別州知事の即時逮捕を求める大規模デモが行われ、約20万人が参加した。しかしその一方で同日未明から元大統領の親族や著名な民主活動家、人気歌手など10人が相次いで逮捕された。その容疑は「反逆罪」つまり国家の転覆をはかろうとしていたというもので、地元テレビ局などは「12月2日のクーデター未遂事件」として大々的に報道するなど激震が走っている。
大規模デモはそもそもキリスト教徒であるジャカルタ州のバスキ・チャハヤ・プルナマ知事が「イスラム教を冒涜した」として11月4日に続いてイスラム教強硬派が呼びかけたもので、スマトラやジャワ島中部などジャカルタ以外の都市から多くのイスラム教徒がジャカルタに集結した。
この日、治安当局は早朝午前3時過ぎ関係容疑者の逮捕に動いた。大規模デモに乗じて国家転覆を図る動きがあるとして午前5時にはスカルノ初代大統領の長女で現在のジョコ・ウィドド大統領の実質的な後ろ盾でもあるメガワティ・スカルノプトリ元大統領の妹でブンカルノ大学学長のラフマワティ女史の逮捕に踏み切った。そのほかに人気歌手のアフマッド・ダニ氏、民主化運動の指導者だったスリビンタン・パムンカス氏などが次々と逮捕された。
■数日前からの不穏な動きを警戒
逮捕された10人のうち、パムンカス氏はジャカルタ南郊チブブールの自宅で機動警察隊によって逮捕されたが、連行される様子が家族によってビデオ撮影されてマスコミを通じて公開された。パムンカス氏は1998年のスハルト長期独裁政権崩壊時は反政府運動の容疑で拘留されており、民主化の実現とともに釈放され一時は時の人となった経緯がある。
しかしその後政治活動を再開するも支持基盤が拡大せず、ネットを通じた活動を強めていた。11月下旬からは特別議会の開催を求めてジョコ・ウィドド現政権の正当性を問うべき大衆運動を2日のデモに合わせて呼びかけていたとされ、これが「クーデター容疑」に問われたとみられている。
ラフマワティ学長やダニ氏も現政権に批判的な発言を繰り返す一方で、イスラム強硬派による大規模デモを利用して反政府運動につなげようとしたと指摘されている。
■一連の動きの背後にいるのは
イスラム教徒の金曜礼拝を終えたイスラム教徒強硬派とその呼びかけに応じた約20万人のイスラム教徒はジャカルタ中心部の独立記念広場を埋め尽くし、イスラム教を冒涜したとされるバスキ知事の即時逮捕などを訴えた。隣接する大統領官邸から雨の中独立記念広場赴いたジョコ・ウィドド大統領は「みなさん、平穏にデモを終えて家路につこう」と呼びかけ、デモ自体は混乱もなく終了した。
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