インドネシアでクーデター未遂? 大規模デモ当日著名人逮捕
Japan In-depth / 2016年12月3日 23時54分
11月4日のデモでは夜になってデモ隊の一部が暴徒化して治安部隊と激しく衝突、騒乱状態となった。その後警察などにより衝突を扇動した容疑者らが逮捕されている。
一連のイスラム教強硬派による反知事運動を背後で扇動していると指摘を受けている一人のグリンドラ党プラボウォ党首は報道陣に対し「インドネシアが平穏であることを望まない外国勢力がいるようだ」と述べ、インドネシアの社会的混乱は外国勢力の仕業との見方を示したが、「風向きが変わったことで外国に責任転嫁しようとしているだけ」(地元紙記者)との見方が強い。
■風向きを変えたのはトゥンク・ウマル
バスキ知事のイスラム教徒冒涜発言に端を発したジャカルタの混乱は警察当局が知事を容疑者指定したこと、さらに起訴したことで沈静化に向かうと思われていた。しかし、起訴では満足しないイスラム教強硬派は「即時逮捕」とさらに要求を強めてこの日のデモを呼びかけていた。
特に自らの政党支持候補や親族が知事選に立候補しているプラボゥオ党首やスシロ・バンバン・ユドヨノ前大統領らがバスキ打倒のこの動きを利用して知事選を有利にしようと画策。その運動が知事選だけに留まらず、与党の闘争民主党との政争、さらに闘争民主党出身のジョコ・ウィドド大統領への批判と反政府運動に盛り上がる勢いを見せ始めていた。
この間、善後策を模索する各政党幹部、イスラム教団体幹部らが相次いでジョコ・ウィドド大統領と会談、インドネシアが掲げる「多様性の中の統一」という国是に従った平和的問題解決の道を見出そうと努力し続けていた。政党幹部、国会関係者らは大統領と同時にメガワティ元大統領の私邸を訪問して会談、意見交換を繰り返した。
単なるジャカルタの問題を政権打倒につなげようとする動きにメガワティ元大統領は危機感を抱いていた。ジョコ・ウィドド政権の屋台骨である闘争民主党の党首でもあるメガワティ元大統領の発言、意向が大統領に大きな影響を与えていることは周知の事実でもある。そのメガワティ元大統領は会談した誰に対しても「デモで意思を表明することは民主主義国家には当然あるべきことである。しかしアナーキー(無政府状態)は許さない」との姿勢で一貫していたという。
こうしたメガワティ元大統領、そしてジョコ・ウィドド大統領の「平穏で民主的デモ」以外を断じて許さないという強い姿勢が一時政権の危機に向かおうとしていた風向きを変え、国軍、国家警察がそれに応える形で不穏な動きや発言を繰り返す人物を「政権転覆容疑」で一気に逮捕することに踏み切らせたといわれている。
現在のインドネシアの政治は、メガワティ元大統領の私邸がある「メンテン地区のトゥンク・ウマル通り」にちなんで「トゥンク・ウマルの意向を無視しては進まない」といわれている。ジョコ・ウィドド政権に批判的な野党などからは「トゥンク・ウマルの院政だ」
「大統領はトゥンク・ウマルの操り人形だ」と批判が出ているが、国民の絶大な人気と支持のある独立の父スカルノ大統領の長女としてカリスマ的な存在でもあるメガワティ元大統領の政治力はいまだに大きいと言わざるを得ないのが実状だ。
そのメガワティ元大統領は2日から始まったインドネシア物産展を訪れ、参加者と談笑したのち市内の日本料理レストランに移動、国軍・国家警察を通じて逐次デモの様子、大統領の動静を聞きながら食事を楽しんだという。
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