多数決は本当に民主的なのか 世界の選挙事情 その3
Japan In-depth / 2016年12月18日 18時0分
と考えている可能性が高い。しかし、言うまでもなく当選者はA候補である。別の言い方をすると、単純小選挙区制においては、たとえ過半数がNOを突きつけた候補者でも当選することがある。
英国の総選挙に話を戻すと、選挙区によっては1万7000票くらいで当選することが可能であるため、日本ではちょっと考えられないような当選者も出現する。たとえば北アイルランドの選挙区では、激しい反英テロを繰り広げていたIRA(アイルランド共和国軍)の政治部門であるシン・フェイン(ゲール語で「我ら自身」の意味)党が、今では4議席を得ているし、過去にはテロ容疑者が獄中から立候補して当選を果たした例まである。
これはいささか極端な例であるにしても、たとえば直近の、2015年の総選挙では、保守党が37%ほどの得票率で、過半数の議席を得た。労働党左派の支持者たちは、「63%は現政権にNOである!」
というスローガンのもと、デモや抗議集会を組織したと聞いているが、これなどは、どの口が言う、といった話だ。トニー・ブレア率いる労働党が18年ぶりに政権の座に就いた1997年の総選挙では、労働党が40%をわずかながら下回る得票率でもって、圧倒的多数(418議席)を得たのだから。
このような背景から、英国の第三党である自由民主党は、繰り返し比例代表制の導入を訴えてきた。この党は、かつて労働党を割って出た旧右派の社会民主党と、旧自由党系が大同団結して旗揚げしたもので、教育程度の高い中間層の支持を得ていたのだが、その分、特定の地域に支持基盤を持つ、というわけには行かず、毎度、得票率を大きく下回る議席数しか得られなかったのである。
それでも粘り強い院内活動の結果、2011年5月には、
「優先順位付きの複数投票制」への切り替えを提起して、国民投票の実施にまでこぎ着けるが、否決されてしまった。中長期的には、なんらかの制度改革が必要になるだろうと私も考えているが、当面の間、英国民が単純小選挙区制を見限ることはなさそうだ。
(その1、その2、も合わせてお読み下さい。)
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