【大予測:米政治】トランプ外交チーム混乱必至
Japan In-depth / 2016年12月27日 15時46分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(12月26-2017年1月1日)」
この原稿はクリスマス明けワシントンのホテルで早朝に書いている。大方にとって意外な結果に終わった大統領選挙の後、今回が初めての米国出張だ。この米国は、そして世界は、これから一体どの方向に向かうのか、大いに考えさせられた。という訳で、今回は地球の反対側から2017年を大胆に予測してみたい。
〇南北アメリカ
半年ぶりでワシントンに来たが、驚くことは意外に少なかった。インターネット時代になり情報は爆発している。余程の極秘事項を除けば、大半の情報は24時間以内に、少なくとも一週間以内には公開されてしまう。逆に言えば、ワシントンという街を知れば、東京にいてもある程度の予測は可能ということだ。
それでも、「なるほど、そういうことか」と唸ることが幾つかあった。例えば、
①米大統領の権力はオバマ大統領とその側近から、トランプ次期大統領とその側近に確実に移りつつある。現大統領は自らの政治的遺産を確定すべく最後の足掻きを試み、次期大統領は前大統領の決定を可能な限り否定・撤回しようとする。その典型例が後述する国連安保理での「イスラエル非難」決議だ。
②クリスマスは終わったのにトランプ政権の全体像が見えてこない。いずれにせよ閣僚人事の確定は議会承認後だ。この程度の遅れはよくあることだが、外交安保チームは、イスラエルとロシアに厳しく、中国に弱腰で、イランと結びつつ、中東で不介入を続けようとしたオバマ外交を完全否定するようだ。
③外交安保チームではトランプ側近、宗教的戦士と日和見的専門家の三者間で共通政策が見えてこない。このままいけば大統領就任式直後から混乱が生じるはず。だが、これも当地ではよくあること、最初の100日間は何とかなる。深刻な矛盾が生じるとすればメディアとの「蜜月時期」が終わる春以降だ。
〇欧州・ロシア
先週のベルリン・テロがメルケル政権に与える悪影響が気になる。来年は仏大統領選挙、独伊の総選挙などが目白押し。最近プーチン政権は仏、エストニア、モンテネグロなど一部の欧州諸国で極右勢力を支援するなど内政干渉まがいの行動が目立つ。欧州の内政が欧州の外交でもあることを改めて痛感させられる。
欧州のダークサイド台頭が全てロシアの仕業とは言わないが、米大統領選にもロシア情報機関の関与が指摘されている。ロシアが国家レベルで欧米、就中NATO、EUの分断を図っていることは疑いない。ロシアの脅威に関し米国の伝統的外交安保専門家とトランプ次期大統領との認識の差は予想以上に大きいと感じた。
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