【大予測:中東】トランプ政権で混迷深まる
Japan In-depth / 2016年12月31日 19時0分
米国は、米国自身の関与、対トルコ支援、ロシア・イラン・アサド政権のトライアングルという与件が構成する方程式に解を出す必要がある。
(2) イラン政策
対イラク戦争以降、中東における最大の勝者はイランであったのかもしれない。イラク、シリア、イエメンに影響力を行使する重要なアクターとなり、対イラン制裁解除についても道筋がついた。
トランプ氏は、米、英、仏、露、中、独(P5+1)とイランとの間でまとまった核合意を廃棄し、対イラン制裁の強化と封じ込めを表明している。トランプ政権の安全保障チームはいずれも筋金入りの対イラン強硬派である。マティス次期国防相はイラクに従軍した元陸軍大将で、イランからもたらされた仕掛け爆弾(IED)により多くの困難に直面したとされる。フリン次期国家安全保障担当補佐官が所属していた海兵隊はイラン関連でレバノン等において多くの犠牲者を出している。さらにポンペオ次期CIA長官は、議員時代から強硬なイラン封じ込め論者である。
本来はIS等のスンニー過激勢力封じ込めにおいて役割を果たす可能性のあるイランではあるが、新政権は、核合意を破棄し、対イラン強硬路線を採る可能性が高いとみられている。さらに米対イランの対立の構図は、おのずと中東全域を巻き込んでいくことになるかもしれない。
(3) 中東和平
トランプ氏は、歴代米国大統領が重要視してきた自由、民主主義および法の支配といった価値にほとんど関心がないように見える。ところが12月に国連安保理において、占領地でのイスラエルによる入植非難決議が採択されると、この決議は「公正ではない」と述べ、強く非難した。在米ユダヤ人との間に距離を置いたオバマ大統領に対し、トランプ氏は、娘婿の影響もあってか、ユダヤ層およびイスラエルに対して、損得ではない別な基準を適用しているかのようである。
強いイスラエル擁護は、パレスチナ人、対イスラエル最前線のヒズボッラーやハマースとの問題を大きくする可能性がある。さらには、中東域内で米国の力に対抗する必要がある勢力、例えば排除されそうになるかもしれないアサド政権、イラン等が、親イスラエルの米国との二項対立の構図を描く可能性もあろう。そうなる場合には、中東でかつて見られたような反米感情が高まり、サウジ等の湾岸諸国や、先の国連決議でトランプ氏の立場に配慮を見せたエジプト政権もそれを無視できなくなるかもしれない。また、かかる反米感情をテロ勢力が利用し、テロの拡散と米国の利益を標的にする可能性もあり、そうなれば、テロリスト輸出国からの移民受け入れ拒否だけでは、米国民の生命を守ることは困難になろう。
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