【大予測:中東】トランプ政権で混迷深まる
Japan In-depth / 2016年12月31日 19時0分
トランプ新政権は、シリア並びにIS問題についてロシアと協力するがイランは排除したい、イランの影響力が拡大することを停止したい、イスラエルは大事にしたい、テロの標的にはなりたくない、米国ファーストで関与は避けたいが弱腰には見られたくない、という目的をいかに整合的に実現するかという問題に直面せざるを得ないように思われる。これらの相互に矛盾する与件の解を見出すことは不可能に近いかもしれない。
さらにトランプ政権の立場が二点において問われている。第一は、トランプ氏が繰り返し主張する通り、オバマ大統領があまりに弱腰で米国の威信をおとしめたことにより、米国の利益が大きく損なわれたとすれば、中東の問題に対処するために直接的な手段を採用するか、という問いである。トランプ氏は、海兵隊を現在の23個大隊から34個大隊に増強すると表明しているが、これらが展開する先は中東となるのか、決断を迫られる局面があり得よう。
第二は、トランプ氏が対中東政策で優先度をつけて見直しを行うことができるかという問いである。トランプ氏の中東政策は、矛盾のある目的を並び立てる程度の無知に基づいているように思われ、戦略的な再構築が求められることになろう。米国ファーストで中東から距離を置いたままで、これまでに表明されてきたような問題意識を解決することもまた、困難であることは明白である。さらに首都ワシントンでは、これまでにトランプ氏が表明した政策を実現するためには、あまりにも予算が足りないとの懸念が惹起されるようになっているところ、対外的な関与を必要とする政策については優先度を付す必要があろう。
トランプ新大統領政権の対中東政策は、問題意識が先行する中、整合性のある形で示されていない。その一方で、アラブ・イスラーム世界には大きな不安が先行している中、放置されるには大きすぎる問題が数多く存在する。トランプ氏が就任すれば、対中東政策を可及的速やかに戦略的に構築する必要性に直面することになろう。
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