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トランプ政権、対中強硬策始動

Japan In-depth / 2017年1月9日 11時0分

両氏が連名で昨年11月に発表した論文は「ドナルド・トランプのアジア太平洋への『力による平和』ビジョン」と題され、オバマ政権の「アジア旋回」策は中国の軍事的な膨張を放置したため失敗したと断じていた。そのためトランプ政権のアジア政策のカナメは中国の軍事冒険主義をまず米側の軍事力増強で抑止することを主唱する。そして新年を迎えてもトランプ陣営の動きは中国へのこの種の断固たる抑止の構えをますます明確にしてきたのである。

グレイ、ナバロ両氏の共同論文は「アジアの自由主義的秩序を保つためには中国の軍事覇権を抑える力の実効が欠かせない」としてトランプ氏がすでに発表したアメリカ海軍艦艇の274隻から350隻への増強、そして海兵隊の18万から20万への増強がいずれもアジア主体であることを強調していた。アジアでの米軍の軍拡なのである。

トランプ政権のこうした構えについてトランプ陣営との距離の近い戦略問題専門家のエドワード・ルトワック氏(戦略国際問題研究所上級顧問)は「対中封じこめ」という言葉を使って、以下のように説明していた。

「トランプ氏は明らかに中国を封じこめたいと意図している。『封じこめ』とはこれまでのオバマ政権のように、中国が海洋に新たな島を作り、その島に軍事基地を建てるのを、まるで観光客が火山の噴火を眺めるかのように、ただみているのではなく、抑止のための行動を起こすということだ」

しかしアメリカ側ではオバマ政権に留まらず、それ以前の歴代政権とも1979年の対中国交樹立以来、「封じこめ」政策は排してきた。中国には関与でのぞみ、アメリカ主導の国際社会や国際秩序へ中国を普通の一員として招き入れようというのが関与政策だった。だがいまやその関与政策の実効が根本から疑われてきたのだ。そんな時期のトランプ政権の誕生なのである。

さてトランプ新政権のこうした姿勢が中国側にはどう映るのか。

トランプ陣営の内情に詳しい保守系の国際政治学者マックス・ブート氏は「トランプ氏の『常軌を逸した予測不能の好戦主義者』というイメージが中国側にあるため軍事競合となると、中国が譲歩する見通しが強い」と論評した。

中国側は外交紛争の解決にはためらわずに軍事力を使う。ただしその際には必ず相手の軍事的な強さを冷静に計算する。そして勝てる相手ならば、どっと軍事の威圧でも、攻勢でも、実際の攻撃でも、一気に踏み切るわけだ。一方、相手の軍事力が強いとなれば、さっと方針を転換する。このへんの情勢の見方はきわめて巧妙であり、実利的である。

米中関係のいまの軍事力の比較をみれば、まだまだアメリカ側が圧倒的な優位にある。だからトランプ政権がいざという場合には軍事力をも使うぞ、という強い態度でのぞんでくれば、中国側はそれまでの無法、無謀な膨張を止める公算は高いということになる。

いずれにせよ米中関係が大きく変わる展望が強くなってきたのだ。そうなると当然ながら、日本への影響も巨大である。

グレイ、ナバロ両氏は「トランプ大統領が日米同盟への誓約や信頼を保ち、対中政策をはじめアジアの安定の基盤とする政策は揺るがない」と明言する。だがそのためにはトランプ新政権が日本にこれまでよりは「公正な防衛負担を期待する」と強調する点の重さも銘記されるべきだろう。

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