デンマークの最新シェアリング経済
Japan In-depth / 2017年1月17日 20時49分
鈴木優美(北欧研究所シニア研究員)
資本主義や新自由主義に代わる新しい経済の形として、シェアリング経済が注目されている。デンマークではもともと19世紀末の農業協同組合運動の伝統から、組合や協会を作り、仲間でシェアすることが広範に行われてきた。サマーハウスやボートを親しい仲間と共同で所有したり、住宅の建物を居住者が共同所有したりする居住形態もごく一般的である。
一般にはシェアリング経済というと、Airbnb、Uberがまず想起され、これらは当然デンマークでも広く利用されている。しかしデンマークのシェアリングエコノミーの範囲は、ホテル代わりの民泊や一時的なカーレンタルといった程度にとどまらず、日常的な通勤のアレンジから、工具の貸し借り、不用品の交換まで実に多岐にわたる。なかでもとくに人気があるのは、GoMore(ゴー・モア)というカーシェアリングサービスである。
GoMoreは、マティアス・ムル・ダルスゴーとソーアン・リースという二人のデンマーク人が、2005年にドイツで哲学を勉強していたころに発案したもので、乗り合いのためのポータルとして多く利用されるようになった。長いこと趣味ベースで行われていたが、2011年にパートナーを得て、2013年にはフルタイムベースで事業化された若い企業である。現在は、デンマークのほか、スウェーデン、ノルウェー、スペイン、フランスでサービスを実施している。提供サービスは、乗り合い、車のレンタル、車のリースの三つである。
自家用車を運転してどこかに行く時に、せっかく移動するのだから、残りの空席を誰かと乗り合いをすることで、そのガソリン代等のコストを部分的にカバーすることを考える。これが乗り合いサービスである。運転手の側からも乗客の側からも、出発地と目的地、時間などの条件から検索することができるようになっており、合意が成立すれば詳細な約束を取り付けられる。乗客は無料で構わないという人もいれば、バスや電車などの他の手段よりも安価な額を請求する人もいる。車内という小さな空間の中で、偶然巡り合った旅の道連れとのおしゃべりを楽しむことが目的で、お金は二の次という人も少なくない。デンマークの地方都市では、今でもヒッチハイクする若者も少なくないため、こうしたサービスが広がる土壌は十分にあった。
加えて、自分の車を使わないときに他の人に貸し出すカーシェアリングをアレンジするサービスがある。例えば、夏休みに3週間外国に行くときに、どうせ使わない車を人に貸し出せば、休暇中の小遣いの足しになる。(加えてAirbnbで住居も貸し出せば、休暇中にかかるお金さえカバーできてしまうかもしれない。)貸し出しにおける保険の対応なども、既定の手続きを踏むことで、万が一、貸し出し中に事故が発生した際の対応にも同社が仲介に入ることで大きな問題に拡大するのを防ぐ。友人同士で単に貸し借りする場合には、こうはいかない。
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