「ニクソン許すまじ」 しぶとい欧州の左翼 その3
Japan In-depth / 2017年1月26日 23時2分
読者ご賢察の通り、1970年代後半にヨーロッパで左翼政党が大いに勢力を伸ばし、英国の労働党はじめ主要国で相次いで政権を手にするまでになった背景が、これである。同時に政財界には、ドルに頼らない市場経済を実現できないものか、といった考えを抱く人が増え、やがてこれがヨーロッパ統合、共通通貨ユーロを実現させる原動力となって行く。前回紹介した初代EU委員長ジャック・ドロールは、こう語った。
「米国の気まぐれなドル政策、強大な経済力を持ちながら国際的責任を果たそうとしない日本、そして第三世界に蔓延する貧困。これらを止揚する原動力となり得るのは、統合されたヨーロッパを置いてない」
しかしながら日本は、そうした方向には進まなかった。米国との関係を見直すことはせず、左翼政党が大きく伸びることもなかった(共産党が議席を増やした事実はあるが)。ドル・ショックの際、市場を閉じたヨーロッパ諸国と違い、日本は市場が開くと同時に、世界中から売り浴びせられたドルを、1ドル=360円の固定相場のまま買い支えた。
これが外貨の大幅な目減りと、円の大放出の結果としてのインフレーションを招いたところまでは、ヨーロッパ諸国と同様で、しかも前述のように、米国は最大の貿易赤字を産む相手である日本を明らかに敵視していた。
ところがここに、田中角栄という政治家が登場する(1972年7月、首相就任)。彼は「日本列島改造論」を掲げ、太平洋側と日本海側の格差解消という美名のもと、上越新幹線や関越自動車道などの大規模公共事業を興し、マスコミが「狂乱物価」と呼んだほどのインフレーションと引き換えの形ではあったが、どうにか景気を後退局面から救い出した。
グローバル経済に明らかに乗り遅れ、危機管理能力に問題がありながら、復元力は異様なほど強いという日本の資本主義、そしてそれに支えられた自民党政治が、左翼政権誕生を阻んだと見て間違いないだろう。
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