暴走する朝日新聞トランプ叩き
Japan In-depth / 2017年1月31日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
アメリカのトランプ新大統領はユダヤ民族虐殺者に等しいのか――
日本のニュースメディアのトランプ報道は過熱の一方である。トランプ新大統領の就任直後からの大胆な政策の数々には明らかに乱暴な措置もある。それらの政策の内容を冷徹に報じ、欠陥や弊害を論理的に批判することはメディアの責任でもあろう。
だからといってトランプ氏をナチスのユダヤ人大虐殺の張本人側になぞらえるのは明らかに扇情的な過剰報道だろう。いや報道という名にも値しない。民主主義的な選挙で選ばれたアメリカの政治指導者がそれなりに法律に沿って実行する措置はあくまで非暴力の範囲内だからだ。しかもトランプ氏がナチスと同じだという主張はたとえ比喩にしても、根拠がない。
しかし朝日新聞はトランプ叩きをそこまでエスカレートさせてきたのだ。1月29日朝刊のコラム「天声人語」のトランプ大統領糾弾は常軌と呼べる範疇を越えていた。アウシュビッツでの大虐殺の実行者をトランプ氏に重ね合わせていたのだった。
このコラムは1月27日がアウシュビッツ収容所の解放72周年だったことを取り上げていた。アウシュビッツ収容所とはいうまでもなくヒトラー総統下のナチス・ドイツが国策として実行したユダヤ民族抹殺計画の犯行の主舞台だった。
ポーランド領内のこの収容所で戦争中に合計110万人ものユダヤ人たちが殺された。同収容所は第二次大戦の終盤の1945年1月27日、ソ連軍部隊によって解放された。以来、1月27日には解放記念の式典が現地はじめ他の地域でも催されてきた。
「天声人語」はそのアウシュビッツについて次のように書いていた。
≪(前略)ユダヤ人たちはやがて強制居住区へ、そして強制収容所へと追いやられた。ポーランドにあるアウシュビッツ収容所は、人類によるおぞましい所業を象徴する場所である▼≫
≪数年前に訪れたとき、所員たちの精神的負担を軽くするための手立てに寒気を覚えた。銃殺でなく、ガス室へ送ることで流血を見ずにすむ。遺体の片付けを収容者にさせ、さらに距離を置く。鈍感の制度化であろう▼≫
≪アウシュビッツ解放から72年となった一昨日、国連の式典でグテーレス事務総長が述べた。「ポピュリズムが、外国人への嫌悪やイスラム教徒への憎悪に拍車をかけている」。思い浮かべていた顔はトランプ米大統領、あるいは欧州の極右政治家たちか▼≫
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