トランプ政権に秋波送るインドネシア
Japan In-depth / 2017年2月9日 8時48分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・インドネシアは世界最大のイスラム人口擁する
・オバマ政権とは良好な関係だった
・他のイスラム教国との懸け橋に、との思いトランプ政権に届くか不透明
■とりあえず静観の構え
ドナルド・トランプ米新大統領が中東などのイスラム教圏からイスラム教徒の入国を規制する大統領令を提出したことを受けて、世界最大のイスラム人口を擁するインドネシアは、自国民への直接の影響は少ないと政府が静観を求める一方で、「同じイスラム教徒として宗教による差別は許せない」と抗議する組織があるなど、複雑な対応を見せている。
特に良好だったオバマ前大統領との関係から「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げる米新政権の真意を図りかねながらも、良好な関係を維持したいとの強い意向がジョコ・ウィドド政権にあるからだ。
2月4日、ジャカルタ中心部にある米国大使館前で小規模ながらトランプ新政権が出したイスラム圏7か国からの入国を制限する大統領令に反対するイスラム教徒ら市民団体の抗議デモがあった。デモ隊はトランプ大統領の顔写真に「独裁者」などと書き、「宗教による差別は許されない」などと抗議の声をあげた。
市民レベルではこうした反対運動が一部ではあるものの、ジョコ大統領は「インドネシア、インドネシア人への直接の影響は極めて少ない」との見方を示し国民に平静を呼びかけながらも「正義と平等の原則は守られなくてはならない」として今後の米政権の出方を注視していく姿勢も併せて明らにしている。一方でインドネシア外務省は在米大使館を通じて米国在住インドネシア人に対して「平静を保って行動するように」との注意喚起も出している。
■インドネシアの理解者だったオバマ氏
2012年10月に誕生したジョコ大統領は国政レベルの政治手腕のない庶民派大統領として発足当初から米オバマ政権との良好な関係を構築した。その背景には幼少期にジャカルタ滞在経験があり、メンテン地区にあるメンテン第一小学校に1969年から1971年まで通学し、バソ(肉団子)が好物と公言するオバマ前大統領の個人的なインドネシアへの思い入れもあった。よきインドネシア理解者でもあったオバマ大統領とインドネシアはテロとの戦い、中国が覇権を一方的に唱えた南シナ海問題、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加問題などで常に歩調を合わせてきた。
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