米メディア「脱真実」時代で暗中模索
Japan In-depth / 2017年2月10日 11時5分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
ようやく日本でも「フェイクニュース(Fake News:嘘ニュース)」の成り立ちやその影響がマスコミでも取り沙汰されるようになってきたが、アメリカのマスコミは「呼吸するように嘘をつく」大統領誕生のおかげで、性急なパラダイムシフトを余儀なくされている。
大統領やホワイトハウス報道官が記者会見中に、明らかに真実ではないことを口走ったとしても、途中で「今のは事実とは違いますよね?」とさえぎるわけにはいかないし、これは本当ではない、事実ではない、という記事を書けば政権側から「悪意を持って我々を攻撃している」と名指しで蔑まれ、会場から追い出されたり、ツイッターで因縁をつけられる有様だ。
ホワイトハウスが明らかにマスコミを敵に回した、とわかるのは、1月11日、大統領当選後はじめての記者会見で、ロシアのウラジーミル・プーチンがトランプの弱みをあれこれ握っているという文書がすっぱ抜かれた直後のことだ。モスクワの高級ホテルでドナルド・トランプが娼婦2人と放尿に及んだというスキャンダルを含む文書を「ウラは取れていない」と認めながらも全文公開した米ニュースサイト「バズフィード」と、全文公開されたというニュースを伝えたケーブルニュース局CNNがともにトランプから「フェイクニュース」と名指しされた。
1月20日の就任式後も、トランプ大統領は執拗に自分の就任式の観客が歴代大統領の中でも一番多かったと言い張り、明らかにそうではないように見える写真を公開した公園局の管理長を電話で呼び出してもっと人が多く見える写真を出せと言い張ったり、職務中に殉死した諜報員の名が彫られたCIA本部でのスピーチでも延々と就任式の参加人数の自慢話を続けた。
それでも飽き足らず、ショーン・スパイサー報道官を差し向け、就任式の数にこだわり続けてマスコミに文句をつけさせ、その発言を今度は顧問のケリーアン・コンウェイがテレビニュース番組で報道官をかばって、あれは「オルタナティブファクツ(Alternative Facts:代替的事実・もう一つの事実)」を述べただけと発言したことから、この「オルタナティブファクツ」という言葉が流行語となったほどだ。
国のトップにフェイクニュースだ、最も不誠実な奴らだと毎日のようにクソミソ言われているマスコミだが、粛々とその任務を果たそうとしているに過ぎない。健闘しているのはやはりメインストリームのニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙で、大統領の記者会見記事に細かく注釈をつけたり、偽証発言の度にその検証記事を掲載している。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏の就任式出席へ バイデン大統領、来年1月
共同通信 / 2024年11月26日 8時42分
-
池上彰さんに“最近の面白かった本”を聞いてみると…「あの夫婦の関係はどうなのかという下世話な興味でも読めます」
文春オンライン / 2024年11月22日 6時0分
-
トランプ氏がホワイトハウスを訪問 バイデン氏と融和ムード演出 ウクライナなど課題協議
産経ニュース / 2024年11月14日 9時12分
-
モディ首相、トランプ氏勝利に祝意、対中強硬姿勢が好機との報道も(インド、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月12日 10時0分
-
〈米大統領選〉ハリス急失速の背景 「バイデンの失言」と「ホワイトハウスの文書改ざん」が落とす深い影
集英社オンライン / 2024年11月6日 7時0分
ランキング
-
1パキスタン、元首相釈放求めデモ激化=首都に軍配備、衝突で死者も
時事通信 / 2024年11月26日 20時41分
-
2米海軍哨戒機が台湾海峡飛行、中国軍は「大げさな宣伝」と反発
ロイター / 2024年11月26日 18時33分
-
3政府が政労使会議開催、石破首相「今年の勢いで大幅な賃上げを」
ロイター / 2024年11月26日 13時46分
-
4ウクライナ軍、3日間で2度にわたり米国製「ATACMS」でロシア領内攻撃 ロシア国防省
日テレNEWS NNN / 2024年11月26日 23時28分
-
5資金源も使途も非公開、米連邦政府を舞台にトランプ版「政治とカネ」劇場が始まった!?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月26日 19時5分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください