安倍政権の奇妙な安定 受け皿ない自民と野党
Japan In-depth / 2017年2月16日 1時8分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
安倍政権の奇妙な安定ぶりをどう考えたらよいのだろう。最近の不況、アジアの分断化、トランプ政権の登場、成果の乏しい外交課題などを考えると、安倍政権のヤマ場は過ぎ、下り坂に向かってもおかしくないのだが、支持率は相変わらず高く、むしろ超長期政権の可能性すら語られている。
まず経済である。確かに株価は上昇しているが、最初の1年余の大金融緩和(量的緩和と低金利)を除くと、最近はひとえにアメリカのトランプ相場に引っ張られているもので日本の内在的要因で上昇しているわけではない。日本の成長率は1%前後だし、日銀が約束した物価上昇2%目標は4年経っても実現していない。ちょっと上昇する時はドル高・円安で輸入物価が高まっているケースが多い。
頼みの成長戦略は、いつまでたっても芽が出ず、スローガンだけに終わっているのが実情だ。もしアメリカの大統領選でヒラリー・クリントンが勝利していれば今の過熱相場はなかったに違いない。
■外交でも特筆の成果なし
得意とされた外交分野も100回以上の首脳会談を行ない、トランプ大統領に最初に面談し私邸に招かりたりしたが、動きはいつも派手ではあるものの成果が少ないのだ。例えば安倍首相肝入りで成長戦略の柱にするといっていたTPP(環太平洋貿易協定)は、トランプ大統領のひと言で破綻してしまった。
アジア情勢では中国の存在感がますます大きくなり、日本寄りだった東南アジア諸国の多くが中国寄りになびき、東南アジア諸国は分断状態になりつつある。朝鮮半島では朴・韓国大統領の弾劾が可決され日韓関係の将来が危ぶまれる一方、北朝鮮はミサイル実験などをやめず相変わらずしたい放題である。
さらに中国は経済関係では歩み寄りをみせているが、南シナ海などの海洋進出では一向に引き下がる気配がない。アメリカを頼りにしたいが、米中接近の気配もあるといった状況だ。おそらく、日中韓首脳会談もこのまま延期だろう。
EUはイギリスの離脱問題で手一杯になりアジアに関心を向ける余裕はなさそうだ。ロシアのプーチン大統領だけが日本に寄ってきているが、それはシベリア開発など経済、技術協力への関心で、日本が力を入れたい北方領土の返還や日ソ友好条約の締結などについては、つれない返事に終わっている。
また、一時は日本が先行したことのある環境問題でも京都議定書の後を引き継ぐパリ協定で、日本は完全に出遅れ、見通しの甘さを露呈してしまった。メキシコに工場を作り、アメリカに無税で製品を輸出できるNAFTA(北米貿易自由協定)もトランプ大統領は見直す方針を公言し、日本の進出企業をあわせさせている。
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